自己血輸血について
 輸血の方法には、献血によって準備された他人の血液を輸血する同種皿輸血 と自分の血液をあらかじめ採血して貯めておき、手術の際に戻し輸血する自己血輸血があります。全身状態が良好で、手術日が数週間先に予定されている方や、まれな血液型である場合などは自己血輸血をお勧めします。
 その理由として、他人の血液を輸血する場合、可能な限り検査を行い副作用の防止に努めていますがときに予期しない副作用を起こすことがあるからです。この原因として、他人の血液自体に問題がある場合と、他人と自分の血液の相性が悪い場合などがあります。

●他人の血液の輸血による副作用としては次のようなものがあります。
  • 肝炎(B型、C型など)、HIV
  • 移植片対宿主病(GVHD)
  • 他人血に対する抗体の産生
  • アレルギー反応(発熱、尋麻疹など)
など

自己血輸血は、自分自身の血液を輸血するので、上記のような副作用を起こすことはありません。

●自己血輸血には
  • 貯血式自己血輸血・・・一定期間に数回の採血を行い、血液を貯める方法
  • 回収式自己血輸血・・・手術中に出血した血液を再度体内に戻す方法
  • 希釈式自己血輸血・・・手術直前に一定量の採血を行って後に戻す方法
が、ありますがここでは一般的な貯血式自己血輸血について述べています。


●自己血輸血は”期間を設けて貯血”するので緊急な手術には適応になりません。また、ある程度出血が見込まれる手術(概ね600ml 以上)に適応となり、手術なら何でも自己血を採ればよいというわけでは ありません。以下に一般的な自己血採血スケジュールの例 を示します。
例)手術の1ヶ月前から当日までに1200ml貯血する場合のスケジュール
手術1ヶ月前 当日のスケジュール

1回目の自己血採血(400ml)

・場合によって鉄剤や造血因子を投与します※


造血因子、鉄剤など


※通常の献血より採血量が多い(約1ヶ月の間に400mlずつ3回)のである程度の貧血が見込まれます。この改善のために鉄剤や造血因子を投与します。




2回目の自己血採血(400ml)
採血

・自己血採血前に貧血の度合を調べるための採血を行います。
手術2週間前
場合によって鉄剤や造血因子を投与します。
これで800ml貯血されました。


造血因子、鉄剤など

3回目の自己血採血(400ml)
採血

・自己血採血前に貧血の度合を調べるための採血を行います


手術1週間前
入院



場合によって鉄剤や造血因子を投与します。
これで1200ml貯血されました。
このころ入院となります。


造血因子、鉄剤など
手術当日 これまでに貯血した自己血を手術中の出血量に応じて返血します。
 自己血だけで足りなかった場合は、他人の血液(献血による日赤の血液)を輸血することがあります。逆に自己血が余った場合は廃棄し、他人に転用することはありません。