ミニコミ誌「みどりの丘」
2009年10月1日発行 今月のおはなし
乳癌検診の話
本当は遅れている我が国の現状
わが国の乳癌検診の歴史は1部の地区において小規模な検診が、1961年頃から始められたようです。そして、1975年から、日本対ガン協会の支援と乳癌研究会の協力で推進され、1991年からは日本乳癌検診学会が発足しています。検診方法は1987年に老人保健事業に組み込まれ、視触診法が標準と定められました。しかし、米国では1960年代、カナダ、英国では1980年代にマンモグラフィ併用検診の効果が盛んに検討されていたのです。2000年になってようやく、厚生省から「がん予防重点健康教育及び検診実施のための指針」が出され、乳癌検診においてマンモグラフィを導入する方針が打ち出されました。
がん検診の最大の目的は、がんによる死亡数の減少ですが、早期にがんを発見することの意義は他にもあります。早期に発見すればそれだけ、治療の際にいろいろな選択肢が生まれて来ることです。乳房温存もその1つで、早期であれば抗がん剤などの使用頻度も減ってきます。治療に伴うさまざまな精神的、肉体的、そして経済的苦痛、負担が減るのです。これらの検診の恩恵は、数字としては現れにくいものなので、死亡率の減少ということだけが兎角注目されてしまうのですが、検診の大切な意義です。
有効な乳癌検診の方法はどういうものでしょうか。このことを述べる前に、検診がある団体や地方の財源のみで行われる場合(対策型)と、自己負担で行う場合(任意型)とに分けて考えねばなりません。前者では、費用と効果のバランスがとても重要になります。つまり、支出に見合う効果の算出が大切で、効果において絶対的なものは死亡率の低下になります。後者では、なるべく安価で、早く出来て、早く見つけられる方法が大切です。腫瘍を見つける場合、画像診断は欠かせません。視触診だけならば、他人にしてもらうよりも自分で毎月でも行う方が早く発見できます。「自分では、触ってもゴツゴツしていてわからない。」という方の乳腺は、慣れない医師ではもっと分からないことになります。普段が分からなければ、判定のしようがないからです。一般的な診断機種として、マンモグラフィ(乳房専用X線装置)と超音波検査があります。X線は、組織を放射線が通過した影として、超音波は組織に当たって跳ね返ってくる音波を画像として描出するのです。乳房撮影は乳房を圧迫坂で挟んで撮影します。挟むことは乳房の厚みを均等化する目的があって、テクニックが必要です。そのための基準や技能判定もあります。乳房を圧迫するのは決して愉快なことではありませんが、とても大切な手技なのです。微細石灰化像(1mmの数分の一以下のカルシウムの沈着)は、ごく早期の乳癌を発見する所見として重要で、初期の淡い石灰化像はマンモグラフィでしか映らないものが多いのです。早期乳癌(転移をしていない)の約4割がこれで見つかります。しかし、マンモグラフィには、乳腺が厚くて密度が濃いと(若い人など)、小さな腫瘤を見落としてしまうという欠点があります。この場合は超音波が優れているのです。各々の特徴を考慮して両方でチェックするのが最も理想的なのです。
乳癌を早期に見つけるための大切な兆候は、1)腫瘤、2)微細石灰化像、3)血性乳頭異常分泌の3つに要約できます。では、有効な乳癌検診の方法はどういうものでしょうか。早く出来て、早く見つけられる方法が大切です。各々の特徴を考慮して、私たちは現時点ではマンモグラフィと超音波の両方でチェックするのが最も理想的だと考えているのです。しかし、両方行っている対策型の乳癌検診が行われているところは少ないのです。




