夜、そこにあるにもかかわらず星の存在に気付かない人が多いと思いませんか。星を眺めても点が並んでいるだけにしか見えない人もいるでしょう。
 みなさんは夏の代表的星座であるさそり座の上で、大きな5角形に星が並んでいる星座、「へびつかい座」をご存じでしょうか。
 昔、太陽神アポロンとテッサリアの王女コロニスは恋をして夫婦になりました。しかしアポロンは自分の使いであるカラスのうそによってコロニスを殺してしまいます(このためにからすはそれ以後黒い姿にされ、それまで話せていた言葉も取り上げられカーカーとしか鳴けなくなったのです)。コロニスが宿していたアポロンの子供はアスクレピオスと名付けられ、ケンタウロス族の智者ケイロン (後のいて座) のもとでさまざまな学問を学びました。中でも医術は彼のもっとも得意とするところでしたが、その才能ゆえに神々の禁を破りアテナイ王テセウスの息子、ヒッポリュトスを生き返らせてしまうことになり、このために大神ゼウスによって雷光で殺されてしまいます。その後罪を許されたアスクレピオスは天に昇ってへびつかい座となり医学の象徴として知られるようになったのです。
 点の集まりにしか過ぎない夜空の星を星座ととらえ、それらにこのような幾つもの物語りがあることを知れば、今までと同じ星空が全く違ったものに感じられるでしょう。
 呼吸管理や呼吸理学療法は機械的に行えばただの単純労働になり、背景にある物語りを知れば合理的な行動になります。そればかりでなく単純労働から解放されて、私達の精神世界を大きくすることができるかもしれません。毎日の仕事の中の背景にある呼吸生理学が、美しく広がりのある世界であることをどうぞ一緒に体験して下さい。

 A2コース副主任 繁田正毅

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