法医学

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主任教授
吉田 謙一

概要

「人の死を生かす」法医学を目指して

東京医大法医学教室は、2014年度より吉田謙一が教授を務めています。同年9月より法医解剖を始め、土曜日に病理解剖室をお借りして年間40~50件行っており、八王子医療センターにおいても開始できるように準備中です。

法医学というと、殺人を思い浮かべると思いますが、臨床医が確実に診断した病死以外の「異状死」全般の死因究明に携わっているのです。例えば、喧嘩、事故、身体拘束、医療行為の最中や直後に突然死すると、行為者の責任の判断を求められます。この判断に加えて、突然死を解剖、検査により診断することは極めて難しいのです。このような理由で、約25年、虚血性心疾患やストレスによる心臓突然死を主な研究課題として動物の病態モデルによる研究を続けてきました。最近5年ほど、独自の装置を用いた睡眠時無呼吸症候群に関する研究に力を入れ、心臓、肺、顔面骨等の病態に関して共同研究を進め、業績を挙げています。

事例で見つけた疑問を分析して症例報告し、動物実験で原因を確かめ、それを実務にフィードバックすることが研究の基本方針です。例えば、暴れる人を押さえつけると突然死する事例があります。従来、胸腹部圧迫による窒息と考えられてきましたが、私は、状況、解剖所見より心臓突然死と推定しました。そこで、正常ラットを身体拘束したところ、細胞間情報伝達が活性化されていました。細胞間情報伝達は、多くの心臓病において障害されているので、ラットのそれを薬剤で遮断したところ、薬物の効果の高い1/4のラットが不整脈により突然死しました。そして、拉致された人が急死した事例の裁判において、窒息でなく、梗塞による心臓突然死と証言しました。

2014年をピークに危険ドラッグ(ハーブ)が社会に蔓延し、危険運転で歩行者が死亡した事件もあり、社会的に注目されています。私達は、病態生理学教室の指導・援助の下、ゼブラフィッシュを用いた危険ドラッグの毒性スクリーニングと病態(横紋筋融解症、突然死)研究を立ち上げていて、興味深い結果を得つつあります(文科省科学研究費B, Cを取得)。この分野に興味のある教官、院生を求めています。さらに、以前より、原修一准教授が、一酸化炭素による脳障害の分子機序について一貫して研究してきました。吉田は、法医学ばかりでなく、多くの臨床系大学院生に様々な病態に関する研究・学位を指導してきました。

1999年、相次いで発覚した医療過誤事件をきっかけとして、診療行為と関連した死亡(診療関連死)の調査が、医療界で盛んに議論されてきました。吉田は、診療関連死調査制度の運営や研究に深く関わってきました。診療関連死の司法解剖を担当する中で、犯罪捜査上の法的制約から、医療専門家の鑑定への関与、事故の再発防止、遺族対応が十分できませんでした。このような問題点を、調査により明らかにし、関係者と協議しながら打開する方策を模索し続けてきました。2015年10月より、診療関連死の調査に関する制度が大きく変わりました。吉田は、この制度改革に、死因究明が貢献する途を探りながら、医療安全の実務や制度を充実させる学術活動に力を入れてきました。一方、経験を活かして冤罪事件の再鑑定にかかわる機会が増えています。

東京医大では、諸先生・職員の方々の力をお借りしながら、質の高い解剖・鑑定を行うとともに、学内外の医療安全や司法等に貢献することに全力を尽くしています。そして、「人の死を生かす」法医学の意義を、学生さんをはじめとして、より多くの先生方、人々にお伝えしたいと願っています。

教育内容

主な研究領域(研究内容)

  • 睡眠時無呼吸症候群動物・症例の病態に関する研究
  • 薬物(危険ドラッグ等)による急死の病態に関する研究
  • 一酸化炭素による脳障害に関する研究
  • 医療事故調査、死因究明の制度に関する研究
  • 法医鑑定、医学鑑定の検証と向上に関する研究

大学院医学研究科について

担当科目名名称

法医学

講義概要

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