口腔外科学

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主任教授
近津 大地
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概要

東京医科大学口腔外科学分野は、昭和21年に東京医科大学病院(淀橋病院から改称)に歯科が設置され、上野 正氏(元東京医科歯科大学名誉教授)が初代科長として就任された時までさかのぼります。実に70年にわたる歴史と伝統を有した診療科です。

現在、当科では、臨床においては顎変形症などについて手術、顎顔面骨骨折の整復、唇顎口蓋裂の顎裂部骨移植手術および顎矯正手術、口腔癌の外科的治療や化学療法、またデンタルインプラントを用いた歯科補綴治療などを行っています。

研究においては口腔再建における再生医療の基礎的・臨床的研究、口腔癌における診断・治療の基礎的研究、睡眠時無呼吸症候群における顎顔面形態からのアプローチに関する臨床的研究、舌痛症など慢性疼痛の発症機序や治療に関する研究など、歯科口腔外科で扱われる臨床症例と密接に関連した研究を行っています。

また、当科は社団法人日本口腔外科学会研修施設でもあり、口腔外科専門医・指導医12名で、口腔外科の専門的知識と経験を有する歯科医師の養成にも力を入れています。現在、非常勤、大学院生を含め医局員は60名を超え、臨床・教育・研究に情熱を傾け、口腔外科学分野におけるリーダーとなるべく日々研鑽に励んでいます。

教育内容

主な研究領域(研究内容)

プロスタグランディン合成酵素COX-2を介した骨代謝調節機構の研究

骨代謝において重要なmediatorであるプロスタグランディン(PG)は、constitutive enzymeのシクロオキシゲナーゼ1(COX-1)とcytokineやhormoneなどの刺激により誘導されるinducible enzymeのCOX-2が存在します。これまで我々は、骨形成・骨吸収におけるCOX-2シグナリングの解明に取り組んでおり、デンタルインプラントのオッセオインテグレーションや顎顔面骨骨折の治癒過程にCOX-2シグナリングが必須であることを報告してきました。

口腔癌の顎骨浸潤・骨破壊に対するPTH・COX-2による新たな治療戦略

Parathyroid hormone (PTH)の骨組織に対する多彩な作用は、COX-2を介するシグナルによって調節されている可能性が高いですが、骨形成作用や顎骨浸潤について十分に検討されていません。現在、担癌マウスモデルやCOX-2ノックアウトマウスを用いた実験アプローチを用いて、口腔癌の顎骨浸潤におけるCOX-2を介するシグナルによって調節されるPTHの多彩な作用を解明に取り組んでいます。更に、患者のQOL低下を招く顎骨壊死を誘発する破骨細胞性骨吸収阻害剤Bisphosphonate (BP)製剤に替わる新たなCOX-2阻害剤と PTHによる治療法を確立することを目的としています。

口腔癌に対する光線力学的診断・治療の臨床研究

光線力学的療法 (Photodynamic therapy: PDT)は極めて腫瘍親和性の高い光感受性薬剤を投与し、腫瘍局所に特定波長の低出力レーザー光を照射することで、活性酸素が発生し癌細胞を殺滅する治療法であう。本治療法は正常組織に大きな障害を与えることなく癌治療が行えるため、組織温存につながり、病変部のみを治療することから、極めて低侵襲的でこの高齢化時代に相応した有効な治療法と考えています。我々はPDTの基礎的研究に引き続き、口腔表在癌に対して、1999年6月より臨床応用し、優秀な治療成績を上げています。現在は第二世代の光感受性薬剤であるタラポルフィンナトリウムを使用したPDTを口腔表在癌だけではなく、深部浸潤癌に対しても応用するための基礎的研究やこの光感受性薬剤を用いた客観的癌診断法(Photodynamic diagnosis)の研究を進めています。

Drug Delivery Systemを用いた新たな口腔癌治療法の検討

近年、消化器領域の悪性腫瘍患者に化学伝達物質遊離抑制剤であるTranilastを投与し、生存期間の延長が認められたとの報告があります。これは、Tranilastが腫瘍新生血管を抑制した結果ですが、我々はDrug Delivery System (DDS)として生体で安全性が確認されているPEG-Liposomeを使用してTranilastを封入しることで安定した薬剤を生成し、担癌動物実験にてDDS+血管新生阻害剤の有効性と有害事象を検討しています。

口腔扁平上皮癌における癌間質成分解析と新たな癌免疫治療の検討

我々はこれまでに、ヒト口腔扁平上皮癌間質におけるFibronectin (FN)の免疫組織化学的検索で、癌間質反応型のFN陽性症例にVLA-5陽性T細胞の浸潤が高度に認められ、FN陰性症例と比較して有意に予後が良好である結果を得ています。また、FNは癌間質の線維化を促進させ、癌の浸潤や増殖に対して防御的な役割を果たしているともいわれ、腫瘍変性因子との相互作用で腫瘍変性をもたらすという報告もあります。現在我々は、担癌マウスを用いて免疫応答増強をはかる目的で免疫療法剤を投与し、同時に癌間質成分であるFNも投与することでその併用効果を分析しています。更に、癌間質成分を用いた新たな癌免疫治療の可能性を検討しています。

口腔扁平上皮癌におけるフッ化ピリミジン系抗癌罪活性化酵素の研究

orotate phosphoribosyltransferase (OPRT)、thymidine phosphorylase (TP)および5-FUの標的酵素でもあるthymidylate synthase (TS)の発現と薬剤奏効性との関連を検討しています。これまで、他の臨床病理学的因子とともに薬剤奏効性に影響を与える因子を多変量解析で検討し、OPRTおよびTSの発現量の変化が最も寄与していることが分かっています。

口腔粘膜疾患に対する漢方製剤の薬理効果における研究

口腔疾患に有効な漢方薬において、我々は歯痛効果を有する立効散の漢方成分がマクロファージ活性化成分と抑制成分を含むことを見出しました。さらに、慢性の口腔粘膜疾患に有用な漢方薬における薬理効果についての研究を行っています。LPS刺激および未刺激マウスマクロファージ様細胞Raw 264.7において柴苓湯、小柴胡湯、半夏瀉心湯などの漢方薬は、NO産生およびiNOS発現を強く抑制しましたが、十全大補湯、白虎加人参湯、補中益気湯、人参養栄湯の漢方薬は、これらを促進する物質と抑制する物質を含むことを報告しました。 現在は、これらの漢方薬の抗炎症作用を確認するためにPGE2の産生とCOX-2タンパク質活性を検討し、併せてNO産生と比較し、漢方薬における薬理効果について詳細に研究しています。

組織培養と多血小板血漿を用いた顎骨再建の基礎と臨床応用

機能的な顎骨再建は口腔外科領域で最も挑戦的な分野です。我々は再生医療を見据えた海綿骨髄(PCBM)、多血小板血漿(PRP)、トレーを用いた顎骨再建に関する数多くの基礎研究および臨床研究を行ってきました。更に、最近は新たな吸収性のカスタムトレーの開発と臨床応用も行っています。

全身の骨代謝が顎骨に与える影響に関する研究

全身の骨代謝異常が顎骨に影響を与えていることが最近明らかになり、特に、それらの治療に使用されるビスフォスフォネート等の骨吸収阻害剤による顎骨壊死は、歯科治療を困難にするだけでなく全身のQOLの低下も引き起こし大きな問題となっています。われわれは、全身の骨代謝や骨吸収阻害剤が顎骨に与える影響、さらにインプラントなどの与える影響について研究を行っています。

睡眠時無呼吸症候群患者に対する顎顔面手術の確立

睡眠時無呼吸症候群患者(OSAS)に対し、手術療法は有力な根治療法であり、特に顎顔面手術は高い成功率が報告されています。一方、日本人OSAS患者は顎顔面形態がその発症に大きく関与することが知られているにもかかわらず、本邦では顎顔面手術がほとんど行われておらず、その適応と限界については明らかでありません。我々は、循環器内科・耳鼻科とのチームアプローチにより、日本人に適した顎顔面手術法を確立するため、さまざまな研究を行っています。

顎顔面変形に対する外科的矯正治療

顎変形症とは、上顎骨または下顎骨あるいはそれら両者の大きさや形、位置などの異常、上下顎関係の異常などによって顎顔面の形態的異常と咬合の異常をきたして美的不調和を示すものです。当科では、手術にあたり詳細なシュミレーションを行い、通常の骨切り術以外に骨延長術などさまざまな方法を駆使して治療を行っています。しかし、最も重要な課題は、安全で確実な治療法の確立です。現在、エビデンスに基づいた、より確実で効率的な治療体系の構築に取り組んでいます。

舌痛症の本態解明

慢性疼痛外来では、主に舌痛に関する研究を行っています。現在、明治薬科大学微生物学教室、薬剤情報解析学教室と連携し、臨床試験「口腔カンジダ症に対する抗真菌剤含嗽投与の有効性と安全性の検討」と題して、舌痛を訴え口腔カンジダ症と診断された症例を対象に、イトラコナゾールを含嗽のみで使用し、臨床症状および真菌学的検査、薬剤の血中濃度の測定を行いその有用性を検討しております。その他、舌痛と口腔乾燥や口腔内の保湿度の関係などの研究も行っています。

頭頸部癌化学放射線療法時における口腔粘膜炎発生予防・減弱に関する研究

頭頸部癌に対する新しい抗癌剤を用いた化学療法や放射線療法の効果への期待が増している中、療法中の健常粘膜組織中にも発生する活性酸素により引き起こされる重篤な口腔粘膜炎はQOLの低下はもとより癌に対する治療継続をもおびやかす事象となり得ます。口腔粘膜炎の予防・制御は、もはや避けては通れない重要な課題であり、癌治療における重要なファクターであります。我々はその活性酸素に注目し、活性酸素除去作用を持つ胃潰瘍治療薬などを用いた含嗽液を作製し、副作用軽減の手法を研究しています。

顎関節症に関する臨床研究

顎関節症は一般的に保存的治療が行われていますが、奏功しない場合、関節腔内を直接洗浄する方法が有効です。東京医科大学八王子医療センターでは、この治療法の安全性と確実性を向上させるために、画像診断装置で顎関節の内部の病態を研究しています。

ヒト歯髄幹細胞の再生医療実現化に向けた基礎的機能解析

2000年に抜歯などにより不要となった歯の神経から幹細胞(ヒト歯髄幹細胞)を採取して他の細胞に分化可能であることが報告されてから、歯髄幹細胞を用いた研究が注目されています。しかし、再生医療実現化に向けてヒトに応用するまでの移植安全性などの基礎的なメカニズムに関しては不明な点が多いのが現状です。そこで、日常診療において不要となった抜去歯より歯髄幹細胞を採取・培養(3次元培養を含む)し、口腔領域にとどまらず全身の組織再生までに応用できる基礎的な機能解析を行い、新たな自己細胞を用いた組織再生法を開発することを目的に研究を行っています。

インプラントの表面機能化を評価するプロトコールの標準化へ向けた検討

現在、歯科インプラントは歯の欠損補綴処置として有用な選択肢の一つとなっています。多くのメーカーがインプラントを開発販売しており、多種多様の表面性状が施され、治療 期間の短縮や長期安定性を目指しています。また、近年ではインプラント表面への紫外線(UV)照射 (光機能化)や加工直後からの生理食塩水への浸漬などにより、親水性の向上や細胞活性が高まることもわかってきました。しかし、そのような表面機能化を評価する標準的なプロトコールは作成されていないのが現状です。そこで、本研究では UV 照射と生理食塩水浸漬による 2 つのチタン表 面機能化を in vitro において、多角的に比較検討することで、標準的評価法のプロトコール確立 を目的とします。

大学院医学研究科について

担当科目名名称

口腔外科学

講義概要

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