研究

1.AD及びALSの原因ならびに発症機序の解明

培養細胞を用いた神経細胞死アッセイ系を中心とするin vitroの研究手法に加えて動物モデルを用いたin vivoの研究手法を併用して、神経細胞死を中心とした神経変性疾患の病因病態の解明を行っている。具体的な研究項目を以下示す。

1) ADの神経細胞死のメカニズムにおけるTGFbeta2理論の検証

我々は2005年、APPは単にAbetaを産生する前駆タンパク質であるのみならず、TGFbeta2をリガンドとするdeath receptorであり、この経路の過剰な活性化がADにおける神経細胞死につながると考える理論を提唱した。in vitro においてこの経路を構成する分子を網羅的に明らかにするとともに、動物モデルの系,ヒト病理サンプルを調べることにより、この考えの妥当性を検証する。

2) ADの認知症状の原因としてのJAK2/STAT3 pathway機能低下-defense theoryの検証

2009年AD 関連神経細胞死及び神経機能異常を抑制する神経栄養因子ヒューマニンの受容体を世界で最初に発見した。さらに、ADの神経機能異常による記憶障害の機序としてJAK2/STAT3 pathwayのシグナル低下が重要であるということを見出し、現在そのメカニズムの研究を行っている。AD 発症には侵害刺激(Amyloid βの上昇やAPP/PS遺伝子変異)に加えて、防御メカニズムが破綻することが重要であると考えているが、JAK2/STAT3 pathwayのシグナル低下はこの防御メカニズムの破綻を示しているものと考えている。またこの病態メカニズムを改善する治療法(下記2参照-ヒューマニン療法)を開発中である。

3)ALS関連運動神経細胞死機序の解明-複合的治療法の開発をめざして

2004に運動神経保護作用をもつALS2/alsinの機能損失により、運動神経細胞死が引き起こされることを世界で初めて報告した。また、2006-2009年、野生型VAPBは小胞体ストレス応答反応に関与しており、ALS8/VAPB(P56S-VAPB)はその機能を抑制することによって運動神経細胞が小胞体ストレスへ脆弱になり最終的に運動神経細胞死を惹起されることを世界で初めて報告した。現在、研究の対象を広げ、ALS10(TDP43),また我々が世界で初めて同定したALS 関連分子BTBD-10の研究を含め、発展継続させている。運動神経細胞死に必須のコアメカニズムを明らかにし、それをターゲットとする治療法開発に結びつけることを最終目標とする。