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研究紹介

現在、第一外科で行われている研究の一部を紹介します。
ゲノム生物研究 ・先端治療開発分野 ・レーザー治療研究分野 ・その他研究

ゲノム生物研究分野

1.肺癌細胞株の樹立とその解析

肺癌細胞の機能(増殖、転移など)をヒトの体内で解析する事は不可能であるため、培養可能な肺癌細胞株が必要となる。肺癌細胞株はそれぞれ組織型、また人種によって違いがある。従って、出来るだけ多くの種類の細胞株が必要となる。また日本人の肺癌の研究には日本人由来の肺癌細胞株がより適している(EGFR遺伝子異常は日本人で頻度が高い)。

2.大細胞神経内分泌癌の細胞株の樹立とその利用

肺癌において、頻度はそれほど多くはないが、非常に予後の悪いタイプであり、臨床的に診断や治療に苦慮する場合が多い。細胞株を樹立し遺伝子及び蛋白質の解析を行ったところ、これまで報告されている遺伝子や蛋白質以外に数多くの物質が認められた。現在それらに関して臨床的に有用なものであるか検証中である。

3.肺癌とプロテオーム

なぜ遺伝子だけでなく蛋白質の解析が必要か?
実際に生体内で働くのは遺伝子だけではなくて蛋白質である。蛋白質は遺伝子から作られるが、一つの遺伝子から一つの蛋白質が作られるわけではなく、その様々な過程において一つの遺伝子から6〜8つの蛋白質が作られると言われている。

プロテオミクスの方法
従来の蛋白質の解析方法(標的蛋白の同定:抗体を用いた方法)としてウエスタン・ブロッティング法、免疫組織化学的染色法、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)などがあげられるが、新たな蛋白質の解析方法(網羅的解析方法:抗体を用いない方法)に2次元電気泳動法+質量分析法、イオン化法+質量分析法を行っている。

2次元電気泳動法+質量分析法について


イオン化法+質量分析法について



肺癌におけるプロテオミクス
これまでに当施設から報告された研究
-Stage I 肺腺癌術後の経口ウラシル-テガフール製剤の有効例と非有効例との比較。
Maeda J, et al. Br J Cancer 2008 ; 98 : 596-603
-FFPE (Formalin Fixed Paraffin-Embedded) を用いた解析。
◇肺腺癌で縦隔リンパ節転移のない群(IA)とある群(IIIA)との比較。
Kawamura et. al. J Proteomics. 2009 Nov 27. [Epub ahead of print]
Nishimura et. al. J Proteomics. 2009 Nov 27. [Epub ahead of print]
◇LCNEC, SCLC, LC間での比較。

FPE組織サンプルを用いた3種類の異なる肺がんを区別するバイオマーカー候補の発見




4.肺癌における糖鎖に関しての研究

糖鎖の構造

糖鎖の機能



がん糖鎖バイオマーカー(血清マーカー)の探索
【基本概念】
(1)細胞のタイプが変わると糖鎖構造が変わる>>癌化すれば糖鎖が変わる。
どう変わったか?<<糖鎖遺伝子の発現プロファイル(定量PCR)
<<レクチンマイクロアレイ糖鎖プロファイル
(2)癌細胞そのものが分泌する蛋白質こそが早期癌のマーカー
癌細胞特異的蛋白質はほとんどない(lineage addiction)
癌細胞が組織の11%を占め、正常細胞の100倍発現、と仮定しても
>>血中では2倍の増加。個人差、日差、体調変動内。
:癌細胞培養液中より探索する(複数種)

(3)がん性糖鎖を持つ蛋白質:同じ蛋白質の1%以下
:血清中のメジャー蛋白質でもよい。がん性糖鎖を持つ蛋白質を同定。


糖タンパク質バイオマーカー開発の基本理念

フローチャート

これまでの成果(1)
肺腺癌、肺小細胞癌に特異的な糖鎖の発見

これまでの成果(2)
肺腺癌に頻度の高い糖鎖の発見


5.EGFR遺伝子変異の研究

肺癌とEGFR遺伝子
EGFR遺伝子は肺癌を始め、様々な癌に関係している遺伝子である。そして肺癌の中で特に非喫煙者の腺癌ではEGFR遺伝子の突然変異が認められる。この突然変異はなぜか、日本人(特に女性)を含めた東アジア人に多く認められる。そのため、この突然変異があるとEGFRを標的とした薬剤が効果がある人が多い。





EGFR Mutation coverage

6.miRNAの研究

MicroRNA(miRNA)

ホルマリン切片を用いたmiRNA


6.E-cadherinの研究

E-cadherin誘導による抗腫瘍効果

HDAC inhibitorによるE-cadherinの誘導




先端治療開発分野

肺および縦隔疾患手術における手術用ロボット《ダヴィンチ》の臨床応用



当科では「肺および縦隔疾患」に対して、通常の開胸手術や胸腔鏡手術だけでなく手術用ロボット《ダヴィンチ》を使用した最先端の手術を行っております。

【現在日本で行われている手術について】
肺および縦隔疾患に対する手術療法として、日本で行われている手術は2つあります。標準開胸手術胸腔鏡下手術です。開胸手術は比較的安全に施行できる方法として国内外を問わず広く行われていますが、傷の大きさが約10〜20cmと大きいため術後の痛みが強いこと、手術中の出血量が比較的多いこと、入院期間や社会復帰までの期間が長いこと等の問題点があげられます。しかし熟練すると出血量も少なく、手術時間も3〜5時間前後と比較的短時間で終わらせることができます。これに対して胸腔鏡下手術は胸部に径1〜2cmほどの穴を3〜5箇所開けて、この穴から長い棒状の手術機器を入れて操作をする手術で、傷が小さく術後の痛みも少ないという利点があります。しかしながら、手術操作に慣れるにはかなりの手術経験を積まねばならず、技術的に難しいことが問題とされています。このような背景から、胸腔鏡下手術は少数の医師が限られた施設で施行しているのが現状です。

【世界中で行われているロボット手術について】
世界中でロボット手術は急速に普及しており、平成21年3月の時点において全世界で約900台使用され、米国は647台、日本は5台の手術用ロボットが各病院に設置され、様々な病気に対してロボット手術が行われています。米国ではFDA(米国食品医薬品局)でも承認された治療方法であり、今後多くの手術がロボットによるものに変るものと予想されます。これまでの手術成績では手術用ロボットを使用することで、出血量が減少し、手術操作の確実性が明らかに改善したとされています。全世界でこれまで行われた手術ではロボットに起因する事故の報告は1例もありません。また、小さな傷からロボットの手を体の中に入れて手術を行うので(ロボットを操作するのは熟練した専門医です)、術後の痛みが軽く、全身状態の回復が早いことが報告されています。

【通常の診療と異なる点について】
手術用ロボットは日本ではまだ“保険適応外診療であり、非常に高価な器械であることと相まって日本での普及が遅れているのが実情です。
これまでの日本におけるロボット手術の使用経験は数少なく、当科が手術用ロボットを実際に臨床で使用するにあたり、“研究”として実施するのは、より安全に手術を遂行するために、あらゆる危険性を熟慮し、一定の規律を設定してこの手術用ロボットを使用すべきと考えているからです。
将来的には、最先端の医療技術であるということを鑑みまして高度先進医療に申請してゆく予定です。
尚、当研究は東京医科大学医学倫理委員会で承認され、学長の許可を得ています。

何かご質問がございましたら当科の方へいつでもご連絡ください。

ダヴィンチを使用した動物の左肺摘出術(動画)動画はこちら




レーザー治療研究分野

光線力学的治療(Photodynamic Therapy: PDT)の適応拡大のための研究のみならず、喫煙と癌化におけるepithelial mesenchymal transitionとの関係、喫煙に関連した分子標的の探索的研究などのトランスレーショナルリサーチを行っている。また、肺癌に対する新しい経気管支的治療の開発や次世代型LED診断・治療装置の開発を行っている。

1.末梢小型肺癌に対する光線力学的治療(PDT)の適応拡大

小型末梢肺癌に対する経気管支的PDTの安全性、有効性を検証し、高齢者肺癌や多発肺癌の治療戦略上、大きな役割を担う可能性のある新たな治療法確立を目的としている。2004年に厚生労働省より認可された腫瘍親和性光感受性物質レザフィリンを使用したPDTは、光線過敏症が軽度で、強い抗腫瘍効果を有している。内視鏡では観察できない末梢の小型肺癌病巣に対して経皮的ではなく、ナビゲーションシステムを活用してレーザープローブを経気管支的に誘導し、新たな低侵襲治療として経気管支的PDTの臨床応用を目指して研究している。

2.進行肺癌に対する次世代型インターベンション治療の開発

進行肺癌による気道狭窄に対して透明なステントを留置後にPDTを施行する。従来は、ステント留置後に癌局所に対する治療は困難なことが多かったが、透明ステント留置後にPDTを施行することにより、癌局所の制御、患者さんのQOLの維持を目的に研究している。放射線治療と比較してステント越しに何度でもPDTを施行できるという利点がある。ブタでの動物実験などと繰り返し安全性、有効性を検討している。

3.悪性胸膜中皮腫に対するPDTの応用

難治性固形癌である悪性胸膜中皮腫に対する治療法は未だに確立されていない。手術、抗がん剤、PDTによる新しい集学的治療法の確立のために基礎的研究を行っている。悪性胸膜中皮腫に対して認可されている葉酸代謝拮抗剤であるpemetrexedは、PDTと併用することでin vitro, in vivoでadditive effectを有してことを明らかにした。胸腔内という解剖学的特徴と考慮したレーザー照射法やLED装置なども含めたデバイスの開発もすすめながら、悪性胸膜中皮腫に対する治療法を開発している。

4.次世代型LED内視鏡診断・治療装置の開発


PDTを施行する上で、レーザーではなく低コスト、小型である発光ダイオード(LED)を使用したPDTは、強い抗腫瘍効果を有していることが明らかになった。LEDの出力増加のために次世代型LED装置の開発を行っている。

5.呼吸器外科手術における赤外観察カメラシステム(Photodynamic eye: PDE)を用いた肺の至適切除範囲の検討、バイオイメージングの研究

ICG投与後に赤外観察カメラによりリンパや血流を蛍光で観察します。肺癌のセンチネルリンパ節の観察だけでなく、肺の区域切除の際の区域の同定、さらにのう胞性肺疾患(ブラ、巨大肺のう胞)の肺切除線の同定などの検討を行っています。また、バイオイメージングの可能性についても検討しています。


6.光線力学的治療の抗腫瘍効果のメカニズムの検討

PDTの抗腫瘍効果、特にPDTによりもたらされるapoptosis、autophagyといったメカニズムを解析することにより、癌治療における新たな標的因子の探索をおこなっている。



7.中心型早期肺癌の分子生物学的検討

中心型早期肺癌に対して分子生物学的検討を施行し、喫煙が及ぼす癌化のメカニズム、特に喫煙による発癌過程におけるepithelial mesenchymal transition (EMT)の変化などについて検討している。また、喫煙が肺癌に及ぼす影響に注目し、薬物療法、PDTなどの感受性に影響を及ぼす標的因子の探索を行っている。


【レーザー治療研究分野研究補助金(2009-2010)】

1.科学研究費補助金:基盤研究C (研究代表者:臼田実男)
「悪性胸膜中皮腫に対する次世代型発光ダイオード診断治療装置の開発」

2.科学研究費補助金:若手研究B (研究代表者:一ノ瀬修二)
「呼吸器外科手術における赤外観察カメラシステムを用いた至適切除範囲の研究」

3.科学研究費補助金:若手研究B (研究代表者:大谷圭志)
「進行肺癌に対する次世代型インターベンション治療の開発」

4.内視鏡医学研究振興財団:研究助成金 (研究代表者:臼田実男)
「LEDを使用した新たな内視鏡的がん治療の開発」


【References】

1) Usuda J, Ichinose S, Ishizumi T, Hayashi H, Ohtani K, Maehara S, Ono S, Honda H, Kajiwara N, Uchida O, Tsutsui H, Ohira T, Kato H, Ikeda N. ; Outcome of photodynamic therapy using NPe6 for bronchogenic carcinoma in central airway greater than 1.0 cm in diameter. Clin Cancer Res 16: 2198-2204, 2010
2) Usuda J, Ichinose S, Ishizumi T, Hayashi H, Ohtani K, Maehara S, Ono S, Honda H, Kajiwara N, Uchida O, Tsutsui H, Ohira T, Kato H, Ikeda N. ; Management of multiple primary lung cancer in patients with centrally located early cancer lesions. J Thorac Oncol 5: 62-68, 2010
3) Usuda J, Tsunoda Y, Ichinose S, Ishizumi T, Ohtani K, Maehara S, Ono S, Honda H, Tsutsui H, Ohira T, Okunaka T, Furukawa K, Sugimoto Y, Kato H, Ikeda N. ; Breast cancer resistant protein (BCRP) is a molecular determinant of the outcome of photodynamic therapy (PDT) for centrally located early lung cancer. Lung Cancer 67, 198-204, 2010
4) Usuda J, Hirata T, Ichinose S, Ishizumi T, Inoue T, Ohtani K, Maehara S, Yamada M, Tsutsui H, Okunaka T, Kato H, Ikeda N.: Tailor-made approach to photodynamic therapy in the treatment of cancer based on Bcl-2 photodamage. Int J Oncol 33: 689-696, 2008
5) Tsutsu H, Kubota M, Yamada M, Suzuki A, Usuda J, Shibuya H, Miyajima K, Sugino K, Ito K, Furukawa K, Kato H. Airway stenting for the treatment of laryngotracheal stenosis secondary to thyroid cancer. Respirology 13: 632-638, 2008
6) Ohtani K, Usuda J, Ichinose S, Ishizumi T, Hirata T, Inoue T, Maehara S, Imai K, Kubota M, Tsunoda Y, Yamada M, Tsutsui H, Furukawa K, Okunaka T, Kato H. High expression of GADD-45-alpha and VEGF induced tumor recuurence via upregulation of IL-2 after photodynamic therapy using NPe6.Int J Oncol 32: 397-403, 2008
7) Usuda J, Tsutsui H, Honda H, Ichinose S, Ishizumi T, Hirata T, Inoue T, Ohtani K, Maehara S, Imai K, Tsunoda Y, Kubota M, Ikeda N, Furukawa K, Okunaka T, Kato H. Photodynamic therapy for lung cancers based on novel photodynamic diagnosis using talaporfin sodium (NPe6) and autofluorescence bronchoscopy. Lung Cancer 58: 317-323, 2007
8) Usuda J, Ohira T, Suga Y, Oikawa T, Ichinose S, Inoue T, Ohtani K, MAehara S, Imai K, Kubota M, Tsunoda Y, Tsutsui H, Furukawa K, Okunaka T, Sugimoto Y, Kato H. Breast cancer resistance protein (BCRP) affected acquired resistance to gefitinib in a never-smoked female patient with advanced non-small cell lung cancer. Lung Cancer 58: 296-299, 2007
9) Ichinose S, Usuda J, Hirata T, Inoue T, Ohtani K, Maehara S, Kubota M, Imai K, Tsunoda Y, Yamada K, Tsutsui H, Furukawa K, Okunaka T, OLeinick N, Kato H. Lysosomal cathepsin initiates apoptosis, which is regulated by photodamage to Bcl-2 at mitochondria in photodynamic therapy using a novel photosensitizer, ATX-s10 (Na). Int J Oncol 29: 349-355, 2006
10)Usuda J, Kato H, Okunaka T, Furukawa K, Tsutsui H, Yamada K, Suga Y, Honda H, Nagatsuka Y, Ohira T, Tsuboi M, Hirano T. Photodynamic therapy for lung cancers. J Thorac Oncol 1: 489-493, 2006
11)Usuda J, Chiu SM, Murphy ES, Lam M, Nieminen AL, Oleinick NL. Domain-dependent photodamage to Bcl-2. Membrane anchorage region is needed to form the target of phthalocyanine photosensitization. J Biol Chem 278: 2021-2029, 2003



その他研究

肺癌に対する低侵襲局所療法と樹状細胞癌ワクチン療法との融合による相乗効果の研究


レーザー治療をはじめとする低侵襲局所療法と同じく低侵襲全身治療である樹状細胞癌ワクチン療法とを融合することにより、より確実な獲得免疫の誘導を期待した新しい治療法の確立を目指しています。

図1にはそのメカニズム、図2には実際の治療シェーマ(現在、倫理委員会申請中)、図3には前臨床試験としてのマウスでの効果を示します。