主任教授 ご挨拶


健康増進スポーツ医学分野                            主任教授 浜岡 隆文

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【社会的背景】 私たちは常に一貫して「快適な生活」を追い求め、20~21世紀の科学技術の進歩により、この理想に近づいたにもかかわらず、さらなる「快適な生活」を追及しています。「快適な生活」は、「楽な生活、体を動かさない生活」と裏腹で、近年のIT化がこの傾向に拍車をかけています。 自宅に居ながらにして、インターネットを通じ、仕事、買い物、銀行取引までできるようになり、体を動かす機会は極度に減り、この傾向はますます助長されることが予想されます。 「快適な生活」の追求と高齢化の影響が相まって、先進国のみならず発展途上国においても、いわゆるメタボリック症候群やロコモティブ症候群が蔓延し、社会問題となっています。これまでの医療は治療医学が主流でありましたが、治療医学だけで病気を減らすことには限界があります。 この時代の流れの中で、最近は「病気の予防」「生活の質の向上」が再認識され、慢性疾患の予防については「身体活動の増加」が重要視されています。近年の根拠に基づいた医療(Evidence Based Medicine, EBM)の流れの中で、慢性疾患のみならず一部の癌の発症にも、明らかに運動不足が関連することが分かってきました。

 

【本分野の活動の概要】 我々、健康増進スポーツ医学分野では、生活習慣病の予防、動脈硬化性疾患の治療、高齢者の体力の維持のための運動に関する運動生理学的研究、および、社会医学講座として他に類を見ない心臓リハビリテーションセンターの分担を主な活動としています。

【研究活動】 運動生理学的研究では、磁気共鳴分光法、近赤外分光法、超音波ドップラー法などの非侵襲的測定評価法を用いて、運動による骨格筋のエネルギー代謝、組織酸素動態、末梢循環動態の変化に関する研究を行っています。これらの研究から得られた成果は生活習慣病の予防や心臓リハビリテーションのための効果的な運動方法の開発に生かされています。 最近では、ヒト褐色脂肪組織の測定を行っており、生活習慣病の予防に有益とされる褐色脂肪組織を増やす方法について検討しています。

【診療】 心臓リハビリテーションセンター(病院7階)(村瀬訓生兼任准教授、渡辺翼兼任助教)では、冠動脈疾患、慢性心不全、末梢動脈疾患、心臓手術後の患者さんを対象とした「心大血管疾患リハビリテーション」を行っており、1次予防から3次予防まで、包括的な予防医学を実践しています。

教育】 医学教育では、社会医学領域の講義・臨床実習に加え、「自主研究」ではスポーツ医学研究の基本を、また、国内の医学部の中でもユニークな、運動による生体の変化、健康維持・増進における運動の有益性などの理解を目的とした、「運動医学」の講義を行っています。 また、WHOを中心とした国際協力による、身体活動レベルの国際比較を目的とした国際標準化身体活動質問表(IPAQ)の開発にも参加し、現在、この質問表は世界各国で使用されています。 今後もより包括的な予防医学の研究および実践を目指した活動を継続してゆきます。