センター概要
目的
本学では、これまでも光線力学的治療など低侵襲な治療方法に積極的に取り組んできました。また近年は、低侵襲医療の代表格とも言える「ダヴィンチ」によるロボット手術に国内でも早期に本格的に取り組み、 これまでに国内随一の実績を積んできました。
今後の社会状況、医療ニーズをふまえ、検査、診断、そして手術などの治療まで、あらゆる局面でのあらゆる技術について、 低侵襲化を進め、先制医療をより進めることで、患者さんにもっとやさしい医療を展開することを目指しています。
そこで、本学では創立100周年記念事業の一環として、2016年4月に「低侵襲医療開発総合センター」を設置し、主に次の二つの業務を行っています。
<1>非侵襲・低侵襲の検査、診断、治療技術の開発・臨床応用に関すること
<2>先制医療による予防法の開発に関すること
組織体制
【1】ロボット・診断治療装置開発部門
本学では、この部門の業務の一環として工学院大学との共同事業として「ロボット・診断治療装置開発部門」を立ち上げ、2016年4月に7つの共同研究事業を開始しました。
1. 新規人工股関節シミュレーターの開発
従来の人工股関節の性能や耐久性を調べるシミュレーターは正確性が十分とは言えませんでした。そこで、生体内での使用環境や、実際の歩行パターンを完全に再現することで、性能や耐用年数をより正確に効率良く把握できる人工股関節シミュレーターの研究開発を行います。
2. ブレインコンピュータインターフェース(BCI)を用いた認知症の早期診断
BCIは、人間が文字を認知したときの脳波反応により文字入力する技術です。これによって軽度認知機能障害患者の認知反応特性を明らかにすることで、視覚的テストと脳波を計測するだけで早期の認知症を診断する装置の開発に役立てます。
3. 経口的手術用リトラクターにおける低圧舌圧子の開発研究
ダヴィンチによる口から内視鏡を挿入する咽頭癌手術で、手術中長時間舌を押さえても舌に障害を与えないよう、舌にかかる圧を測定することで、舌に異常をきたすことがない開口器 (リトラクター)を開発します。
4. 侵襲なく耳小骨病変を診断する新検査機器の開発
鼓膜が正常の伝音難聴において、従来の検査機器では鼓膜の奥にある耳小骨の病変を精度高く診断することができず、確定的には鼓膜を開放する必要がありました。そこで機器の精度を高め、手術なしで診断が可能となる技術開発を目指します。
5. リキッドバイオプシーによる低侵襲診断システムの開発
リキッド=液体で、ここでは血液を意味します。体の組織を採ることなく、血液検査だけで、血中の生体分子から病変を発見する技術が進んでいますが、 新たに発見された血小板中のRNAを解析することで病変を発見する技術を開発します。
6. 肺癌のバイオマーカーによる悪性度評価と次世代低侵襲治療
肺癌の治療法選択には様々な検査による診断が必要です。その一つである腫瘍個々の悪性度の評価も重要です。そこで、細胞微細構造を詳細に見えるようにする技術を応用して癌の早期診断、悪性度評価を可能にする技術を開発します。
7. 放射線治療における高精度体位位置決め法の開発
放射線を利用した治療機器では、正確な治療のための位置合わせが重要で、これは技師による熟練した技術に依存しています。そこで、皮膚表面の形状把握技術とCT画像とを照合することによって、高精度の位置決め装置を開発します。
【2】健康増進・先制医療応用部門
健康増進・先制医療応用部門では、唾液を用いたメタボローム解析による癌検査技術を実用化することを目指します。また同時に、生活習慣病のバイオマーカーを幅広く検索、同定することも目的とします。