医学科 カリキュラム紹介 第1学年-第6学年

近年医学教育において、国際基準にあったカリキュラム設計を行うことが強調されています。1)卒業時において出来なければならないことを明示し、段階的継続的に履修していくこと、2)臨床実習の枠の拡大、診療チームの一員として臨床実習を行い、ベッドサイドから学ぶこと、3)一般教育の概念を拡大し、医療倫理、プロフェッショナリズムを含んだ内容を、6年間に渡って考えることが要請されています
この状況の中で、本学も2014年度以降教育プログラムを見直し、基礎と臨床を統合した考える姿勢、高い診察力、プロフェショナリズムに基づく行動の修得を目標として、カリキュラムと評価体制を構築してきました。さらに、学修成果に基づき、これらの目的が実現するように絶え間ない自己点検を行っています。これにより、「患者とともに歩む医療人を育てる」本学のミッションを実現し、医科大学としての社会的責任を果たします。

教育要項(シラバス)

カリキュラム(令和6・5年度入学者)

カリキュラム(令和4年度入学者)

カリキュラム(令和3年度入学者)

カリキュラム(令和2年度迄入学者)

第1学年

人間学系科目

医療心理学・死生学

心理学では、将来の医師として必要な、患者・家族・医療従事者の心理と行動について理解します。また、他人を理解しより良い人間関係を持つためにコミュニケーションの理論と技法を習得します。前期では、実際の臨床場面に即した事柄について講義を行い、後期では、ストレスの概念や生活習慣病から健康と疾病に関して心理学の果たす役割を知ります。

哲学

本講義の前半では、なつかしさや死に対する恐怖のような「情緒」のあり方や、社会正義や幸福のような諸「価値」のあり方について、小グループで討論しながら、それらの「本質」(核心にあるもの)をつかみだすことを行う。人間理解の進展と、事柄の本質を問う方法(現象学的本質観取)の体得が目的である。後半では、医療の原理的理解とそれにもとづく医療の新しいかたちを展望する。

社会科学

社会科学では、私たちの身の回りに生起する諸問題を複合的な社会現象と見なし、社会学・人類学・歴史学・経済学・政治学などの社会科学の諸領域で蓄積された理論や知見を援用しながら理解していくことを目指します。授業は、具体的な事象を題材として学生自身が多角的に調査し検討する方式で進めます。

生命倫理学

生命倫理学では、生殖医療や終末期医療等の現代医療や医学研究における倫理的問題をとおして倫理学を学びます。また、この学習が数年後の臨床実習生として、さらにその後の医師として医療と関わっていくうえで重要であることを理解します。講義では随時、具体的事例を提示し学生が自ら考え議論する能動的授業も行います。

法学

医療者はその実務において、行動基準として常に法に準拠することが必要になります。医療者には法の理解が必須なのです。授業では法の基本原則と種々の臨床現場等で必要な特別法(医師法・母体保護法・臓器移植法等)に親しんでいきます。とは言え、半年という時間でできることは限られます。そこで、東医精神である「自主自学」によって、医療者として生涯付き合える楽しいパートナーと法を捉えられるよう、楽しい法学と目指します。

医療と医学の歴史

この授業では、感染症の流行と対策の歴史を政治・経済・文化などとの関連において取り上げ、医学・医療が社会・国家・個人などとどのような関係にあったのかを学びます。そのうえで、医学・医療のみならず、現代社会がどのように形成され、今日の我々がどのような課題に直面しているのかを考えます。この授業が対象とする主な時代と地域は、19世紀から21世紀の日本・東アジア・ヨーロッパ地域です。この授業を通じて、過去と現在のつながりを意識しながら、現在の医学・医療を取り巻く環境やその将来のあり方を考える力を修得してほしいと思います。

人間理解のための文章講読

哲学の重要なテクストを読みます。毎回、各節のレジュメとコメントを参加者に発表してもらい、その内容をめぐって議論します。内容の理解と議論とを楽しみたい人に、参加してもらいたいです。進行の速度も、予定どおりに「こなす」ことを優先せず、参加者が内容をていねいに味わえるように、配慮します。少人数で討議するため、受講者は 25 名以内としています。

医療人類学

医療人類学では、グローバル化や価値の細分化、さらには臨床現場での協働化や医療者-患者関係の複雑化という事態を踏まえ、健康に関する様々な事象を複数の規範や価値のもつれ合いのなかで捉え、より多元的で相対的な視点から理解する能力を養います。授業は、6~8人程度の小グループで具体的な課題に取り組み、その理解や解決を目指す方式で行います。

自然科学系科目

先進医療のための科学

先進医療のための科学では、MRIや放射線治療を理解する上で欠かすことのできない量子力学の基本を学びます。その後に放射線・X線の発生原理、その効果について学習します。さらに、磁気共鳴の原理を学び、基礎・臨床の見地からの応用例についても学習します。

人体の物理学

人体の物理学では、基礎的な物理の知識を復習してから、人体に即した物理の応用を学びます。力・熱といった物理的なテーマが、身体バランス・エネルギー代謝といった医学的なテーマとどのように結びつけられるか、人体と外界との関わりの中でどのように生かされていくか、豊富な実例を挙げながら学びます。

数学

数学は, ものごとを合理的に考えることにおいて, 欠くことのできないものです。はじめに、数学の土台, すなわち, あらゆる思考の基礎となる論理や集合や写像について学びます。集合や写像を自由に使いこなせるようになることがひとつの目標です。そのための題材として、集合の大きさを測る最も原始的な基準である濃度について学びます。

医系の物理学

医系の物理学では、講義と実習とを合わせて、医学における準備教育モデル・コア・カリキュラムに準拠して物理学全般について学びます。講義では、力学・電磁気・波動等の学習を行い、実習では波動・熱・電磁気・現代物理等をテーマとする学習を行います。

医系の化学

医系の化学では、生命活動を支える元素の役割、生体有機分子の三次元構造および、それらの物性と反応を学びます。これらは無数の化学反応が組み合わさって起こる生命現象の理解に繋がります。そして、高等学校の化学の基本知識から有機電子論の考え方が理解できることを実感させ、覚える学修から考えて納得する学修への転換を図ります。

生物学

生物学では、医学を学ぶための前提として身につけておくべき生命現象について細胞・分子レベルで理解します。講義では、細胞の構造と機能、細胞周期、DNAとタンパク質、遺伝、内部環境の維持について生物の共通性と多様性の観点から学びます。実習では、細胞や細胞分裂の観察、マウスとカエルの比較解剖などを行います。

自然科学基礎(物理学)

自然科学基礎(物理学)では、学習に必要な数学および力学と電磁気の基礎を学びます。また、自然認識の方法、現象を定量的に表わす方法を習得し、力学や電磁気の表現法を理解します。授業は主に演習とその解説を行い、力・ベクトル・位置・運動・電荷・電場・磁場等の概念を理解します。

自然科学基礎(化学)

自然科学基礎(化学)では、高校で化学を十分学習しなかった学生が、化学的な見方・考え方を身につけ、大学での化学を理解できるよう化学の基礎概念・理論的背景を習得することを目的としています。物質の構成と原子の構造・物質量の概念・化学変化にともなう物質量の変化の記述・有機化合物の特徴・物質の状態などを演習を主体として学習します。

自然科学基礎(生物学)

自然科学基礎(生物学)は、高校で「生物」を履修していないか、十分に学習する機会がなかった学生を対象として開講します。高校から大学の学びへの接続をスムーズに結ぶことを目的として、予習を前提とした少人数クラスの講義により、生物学の学習内容と連動した学びの機会を提供します。

生命現象の科学Ⅰ

生命現象の科学Iでは、医系の化学で学んだ基礎を発展させ、まず、有機化合物の反応性を予測するための基本を学びます。さらに、分子のマクロな性質として化学エネルギー、化学平衡などを学修します。また、生命の維持を司る生体分子の構造および性質について、学びを深めます。

生命現象の科学Ⅱ

医学を学ぶために理解しておくべき生命現象について、普遍性と多様性の面から科学的方法論に基づいて生命を理解する態度を涵養します。「進化」では、地球上に生命が誕生して以来、どのような道筋をたどって現在のような生物の世界ができてきたのかを学修します。そこで、その原動力となる進化の仕組みについて学修します。また、多様な生物をどのように分類できるのかについて、DNA の塩基配列などを比較することによって得られた生物の系統に関する知見について学修します。「行動」では、遺伝情報と外部・内部環境の情報伝達のネットワークがどのように動物の行動を制御しているのか、さらに、それらの行動が自然選択によって進化したことを学修します。「発生」では、ヒトの初期発生の形態的変化を中心に、生殖のしくみ、初期発生の過程について学修します。「生物圏と生態系」では、生態系の中で、多様な生物が共存している様子やその仕組みを学修し、生物多様性とその保全について認識します。

外国語科目

独語

ドイツ語の初歩を一年間かけて学びます。初級文法の習得を中心に、ドイツ語圏の文化にも触れていきます。ドイツ語という言語を通じて、英語とも日本語とも異なる発想や論理を知り、豊かな思考力を養うことをめざします。

仏語

フランス語では、読み、書き、話すための基礎的事項を理解し、フランス語の総合的運用能力を向上させます。前期は、発音、文法、動詞活用を中心に講義を行い、後期は、文章を音読、解釈し基礎知識を習得すると共に中級フランス語のために必要な事項を説明します。

English For Medical PurposesⅠ

 English For Medical PurposesⅠでは、現在の医療の基本的ニーズのひとつは英語での情報を吸収し、それを伝達すること。特にインターネットと電子出版で医師が英語で書かれたものを把握する必要が増えてきたことから、医学英語を自由自在に読み書きできるためのファーストステップとして基本的な医学用語をマスターします。

中国語

昨今のインバウンド熱の高まりとともに、観光プラス医療の目的で日本に訪れる外国人が増えています。将来、医療現場で遭遇するであろう場面を想定して中国語の初歩から学びます。

韓国語

韓国語の語順は日本語と同じであり、文法も細かな点まで似ています。また、日本語と共通する漢字語由来の単語が多いため日本人にとっては学習し易い外国語であると言われています。授業では韓国語の文字であるハングルの読み書きから始まり日常生活で使われる基礎的な言葉を学習します。言葉を通じて、韓国の文化についても触れることができます。

スペイン語

スペイン語の基本的な文法・語彙を学んだ上で、日常生活に必要なコミュニケーションができるようになるための練習を行っていきます。また、簡単な文章の内容理解・自分で文章を作るなどの活動も実践していきます。

横断的領域科目

情報科学Ⅰ

授業の前半では、まず、東京医科大学の IT 環境が利用できるための情報を理解し、無線ネットワーク、メールアカウント、eラーニングシステム等の設定を行い、それぞれの使用法を学ぶ。次に、著作権、個人情報保護、セキュリティ、マナー等、情報を利用あるいは発信する際に注意すべき事柄について学ぶ。授業の後半では、プレゼンテーションソフトの使い方を学び、課題研究のプレゼンテーション資料を作成する。また、研究デザインを立案し、必要なデータを収集し、統計学的に解析して仮説を検討する一連のプロセスを経験する。

課題研究

本授業では、少人数グループで討論しながら、短い課題文のなかから問題を発見し解決していく学生主体の学習(PBL: Problem Based Learning)を行っている。2016年の課題文は、運動、高齢化、錯覚・錯誤、巨大災害の4つのテーマから作成されたが、理科だけでなく人文社会的な内容も含まれている。医師として必要な、能動的主体的に学習していく姿勢とそのための方法、またチームとして協力しあう仕方を学ぶことが主な目標である。

データサイエンスⅠ

現代社会において、インターネット、スマートフォン、数々のIoT(Internet of Things)デバイスが普及したことによって、 そこで得られたさまざまな種類のデジタル化された膨大なデータ(ビッグデータ)が蓄積されてきています。データサイエン スは、ビッグデータなどの多種多様な情報から意味のある情報や法則や関連性などを抽出し、効果的に利用し活用(利活 用)するための処理の手法を研究する分野です。授業では、様々な業種においてデータ・AI(人工知能)がどのように利 活用されているか、データを利活用するにあたり基本的なデータリテラシー、さらにデータの利活用にあたり留意すべきことなど、データサイエンスのリテラシーレベルについて学修することを目的とします。

データサイエンスⅡ

データサイエンスに必要となる数理統計の基礎について学修します。最初に、前期科目「データサイエンス」の概要について復習します。次に、データサイエンスを行うにあたって必要となる数学の基礎的な知識について学修します。最後に、機械学習を用いたデータ分析の演習を行います。

基礎医学系科目

解剖学(1)

2学年次の解剖体実習で3次元的に人体構造を学ぶ準備として、8回の実習(臨床医による講義を含む)を通して解剖学の基本となる骨学を学びます。実習では、人体が一般的(普遍的)な法則に則って構成されながらも、ひとりひとりが教科書にないような多様性(個性)を有していることを じっくりと観察してもらいます。その観察眼を育てることが、将来、患者の状態を正確に把握し、ひとりひとりに合った医療を行う力へとつながっていくという 理念のもとに教育を行います。

解剖学(2)

人体の構造を顕微鏡レベルで学ぶ「組織学」の講義(午前)と、人体組織標本を顕微鏡で観察する実習(午後)を行います。基礎医学では、人体の構造・機能・病理を理解するために、肉眼解剖学、生理学、病理学を学びますが、これらの分野の橋渡しをするのが組織学です。実習では、顕微鏡下に未知の美しい画像が観察できます。自らの手で人体組織のスケッチや模式図を描くことによって、形と機能を結びつけるのがこの授業の目的です。

生理学

生理学では、生体の多様な調節・制御機構を学びます。正常な生体の機能を学ぶことは、将来臨床医学で学ぶ様々な病態を理解する基礎として不可欠です。講義では、膨大な情報の中から必要な基本的知識を選択して提供します。実習は、講義で得た知識を実際に手を動かして体感し、筋道をたてて考えることを目的とします。

生化学(分子生物学概論)

体の「設計図」ともいえる遺伝子の構造と機能や,細胞分裂に伴う「DNA複製」,遺伝子発現における「転写」「翻訳」のプロセスを系統的に学習し,生命現象を分子レベルで理解し考察する思考の定着を目指します。また,これら学習内容が今後の臨床医学教科にどのように反映されるかを「がん」「代謝・変性疾患」「遺伝性疾患」等の具体的疾患例を示しながら「医学部のための分子生物学」の講義を行います。

基礎医学統合演習Ⅰ

臨床医学の修得には土台となる基礎医学の知識が不可欠です。第1学年後期より始まった解剖学、組織学、生理学、分子 生物学の知識は、臨床医学を深く科学的に理解する上で重要な教科です。日常診療で患者がしばしば訴える「発熱」、 「胸痛」、「腹痛」、「倦怠感」等の主要症候のどの一つをとっても、基礎医学で学んだ知識を有機的に総動員しなけれ ば、的確な診断と治療指針の決定には至りません。「疾患・症候の背景には理論がある」ことを理解し、基礎医学の知識を、 単に試験にパスするための断片的なものではなく「使える知識にする」ことの重要性の気づきの場として、この「基礎医学統合演習」を設定しています。

臨床医学系科目

症候・病態学入門

2症例について小グループに分かれ症例ベース(PBL)形式で学修する。グループによるディスカッション、発表に加え医療面接や臨床推論に関するシミュレーション実習や模擬患者さんとのOSCEなど医師として必要な実践的な様々な能力が要求される。グループで協力して問題解決に臨み最高のパフォーマンスを発揮してほしい。

臨床実習

早期臨床体験実習Ⅰ

入学直後から、医療面接、ファーストエイド、医師とのシャドーイング、患者とのディスカッション、外来体験、患者・家族のエスコートなど多彩な病院実習やシミュレーションを通じて学ぶ。1週間の看護実習では、一人の看護師と行動を共にする。東京薬科大学薬学部や本学看護科の学生と、シミュレーション、ディベート、症例検討を通じて、多職種連携の重要さを知る。

第2学年

人間学系科目

医療プロフェッショナリズムⅠ

医師としてプロフェッショナルであることは、単に医療の技術が高いとか専門性が高いあるいは研究業績が多いというテクニカルなことだけではなく倫理観、振る舞い、コミュニケーション能力、チームワーク、リーダーシップ、ストレス管理、状況認識力、意思決定力、態度、教育能力、グローバル化への対応、情報処理、能動的学修、生涯教育などノンテクニカルスキルが重要であることを学ぶ。医療におけるプロフェッショナリズムとは何かについて医学生として一人一人の深い考察が望まれる。

外国語科目

English For Medical PurposesⅡ

English For Medical PurposesⅡでは、医学用語及び表現の学習と医学関連の一般的な英文記事の読解を中心に進めていきます。「医学英語」の基礎知識を生かし、語彙の成り立ちを理解し、語を構成する要素の自在な組み合わせの技能を習得します。また、パワーポイントでの発表と外国人模擬患者との医療面接も行います。聴解力・会話力の基礎作りの為、授業は原則英語で行います。

横断的領域科目

行動科学・患者学Ⅰ

行動科学とは、医学のみならず、社会学や心理学等に含まれる知識や技術を統合した学問です。医療者が保健医療の現場で行動科学の視点を活用することで、患者およびその家族の気持ちにより寄り添った診療につなげていくことを期待しています。本講義では人々の行動、認知、心理をキーワードにした行動科学の基礎的な理論を習得します。

3大学協働授業

本授業は、東京薬科大学、工学院大学との多職種協働PBLです。少人数に分かれ、高齢社会、生活習慣病、新興感染症の医療的・社会的な課題の解決にためのデジタル・セラピューテクスを作製します。医学関連知識や工学系知識・技術を融合して、「医療の解決策」を協働して考える機会を通して、①背景の異なる学生間で協働して、意見をまとめ成果物を作ることが出来る、②データから課題を見出し解決策を提案する経験をし、その重要性を経験することを目標とします。

基礎医学系科目

解剖学(1)

約60日間の解剖体実習を通して3次元的に人体構造を学びます。実習では、人体が一般的(普遍的)な法則に則って構成されながらも、ひとりひとりが教科書にないような多様性(個性)を有していることを じっくりと観察してもらいます。その観察眼を育てることが、将来、患者の状態を正確に把握し、ひとりひとりに合った医療を行う力へとつながっていくという 理念のもとに教育を行います。

解剖学(2)

脳や脊髄を中心に神経系の構造を学ぶ「神経解剖学」の講義と、人脳を肉眼レベルで解剖する実習、および顕微鏡レベルで脳組織を観察する実習を行います。講義では、我々の日常生活を、感覚、運動、情動、高次機能、自律機能の面から考え、それらがどのような脳の構造、ネットワークと関連して行われているのかを説明します。また実習では、自らの手で脳を解剖することによって、CTやMRIの画像を立体的な構造として理解できるようにします。

生理学

生理学とは、その名のとおり、生命の論理(logic of life)です。人間の個体、器官、組織、そして細胞に至るまでどのレベルにおいても、生きて機能するためには、複雑に組み合わさった非常に多くの部品が正しく制御されなければなりません。生理学では、そのような精巧な仕組みを学びます。一方、このような論理の破綻が病態ということになります。したがって、病態を理解する上で生理学は大きな助けとなります。また、病態を治療するための薬物の作用を理解する上でも、生理学の知識は必須となります。

 生理学(2)の前期は、「循環器系」、「感覚・神経系」について詳しく学びます。また統合演習によって基礎医学で学んだの知識を総括します。後期は「心拍変動測定」、「心電図・血圧」、「誘発筋電図(M 波、H 波)」、「経口ブドウ糖負荷試験」、「尿生成とクリアランス」と項目別に実習を行います。

生化学

生体を構成する分子(糖質、脂質、タンパク質、核酸など)の構造・機能・代謝について学びます。講義では、生体分子それぞれについて学んだ後、その繋がりと全体像を俯瞰することにより、「人体」における生命活動の制御、また、疾病における調節機構の破綻について、分子レベルで考えます。実習では、「目に見えない」生体分子を可能な限り可視化する生化学的分析手法を学び、講義内容を体感できるように立案されたテーマを実施します。

免疫学

免疫学では、環境に存在する病原体の侵入をいかに食い止め体内の恒常性を維持するか、高次機能系としての免疫系のメカニズムを学習します。講義では、天然痘撲滅から最新のメタゲノム解析までの免疫学の潮流、自然免疫・獲得免疫から自然リンパ球までの免疫細胞ネットワーク、がん治療のブレイクスルーとなっている免疫チェックポイント療法など、米国の医学部の標準的テキストに沿いながら網羅的に解説し、さらに最先端の研究者によるスポット的な特別講義でアップデイトな知識を修得します。実習では、抗原-抗体反応の古典的知識から、フローサイトメトリー解析など臨床にも有用な手法を習得します。実習では、抗原-抗体反応の古典的知識から、フローサイトメトリー解析など臨床にも有用な手法を習得します。

薬理学

個々の薬剤の薬理作用を理解した上で、病態に対する薬の正しい使い方を修得します。講義では薬理作用の基本、薬物動態、薬物治療の基本原理について学び、実習では、動物を用いて自律神経作動薬、全身麻酔薬、鎮痛薬の薬理作用を観察する一方、PCを用いて薬の副作用・相互作用、薬物の体内動態に関する知識を深めます。

病理学

病理学では、各臓器に共通する炎症や腫瘍などの基本的病変の定義、原因、発生機序や形態学的特徴を学びます。また、疾患の究明に必要な病理学的方法論を理解します。講義では各臓器共通の炎症や腫瘍などの基本的病変の病理学的特徴を解説します。実習では講義内容の理解を深めるために顕微鏡を用いて代表的病変を観察します。

微生物学

微生物学では、まず微生物全般の特徴を理解し、代表的な病原体については感染症との関わりの中から個々の性質を学びます。さらに臨床的な側面からも感染症の病態や診断、治療、予防について基礎的知識を習得します。新しいカリキュラムにおいては、寄生虫学も微生物学の枠に含まれ、感染症の病原体全体の知識を深めます。実習では菌の染色,培養,同定、薬剤感受性検査、ウイルス抗体価の測定、寄生虫の観察などを行います。

運動医学

現在、大きな健康問題となっている高血圧、脂質異常症、糖尿病、心血管疾患などの生活習慣病は、身体活動量の減少(運動不足)がその発症に大きく関わっており、これらの疾患の予防や改善のためには運動の継続が重要です。また、わが国では人口の高齢化に伴い要介護者の数が増加しており、その原因となっている動脈硬化性疾患や体力の衰えを予防するためにも運動の継続が極めて重要です。本講義では運動による身体の生理的、生化学的応答を理解すると同時に、健康の保持・増進に及ぼす運動の効果およびその重要性について解説します。

医用電子工学

医学、医療の分野に広く応用されている放射線や、放射線以外の電磁波などの医学への応用について学びます。画像診断、核医学検査、内用療法の原理、放射線物理学、放射線生物学、放射線防護など放射線医学の基礎を習得することができます。

基礎医学統合演習Ⅱ

臨床医学の修得には土台となる基礎医学の知識が不可欠です。第2学年で学んだ病理学、免疫学、微生物学の知識は、臨床医学を深く科学的に理解する上で重要な教科です。基礎医学で学んだ知識を有機的に総動員しなければ、的確な診断と治 療指針の決定には至りません。「疾患・症候の背景には理論がある」ことを理解し、基礎医学の知識を、単に試験にパスする ための断片的なものではなく「使える知識にする」ことの重要性の気づきの場として、この「基礎医学統合演習」は設定し ています。第1学年の「基礎医学統合演習I」に引き続き、病理学、免疫学、微生物学に関連するテーマを学びます。

社会医学系科目

社会医学Ⅰ

社会的存在として、人の出生から死亡にいたるライフサイクルの中で、様々な事象を医学的側面と社会的側面の両面から考究して、疾病予防と健康増進の考え方とその重要性を学習します。これまで学んできた基礎医学と別の立場で、医学と社会とのつながりを学び、その知識を将来保健・医療活動に応用できるようにします。社会医学の範囲は極めて広く、講義は教科書のほか、直近の統計データなどの補足事項については講義の中でスライド等様々な資料を使用して進めていきます。

臨床実習

早期臨床体験実習Ⅱ

現代の医療がチーム医療であることを、本院、茨城医療センター、八王子医療センターの、放射線部、看護部、薬剤部、中央検査部、医事課、栄養管理科、臨床工学科、リハビリテーション、総合相談支援センターなどでの2週間の体験を通じて学ぶ。平成28年度から、本実習期間の最初の2日間は基礎医学の知識を駆使した症例ベースのシミュレーション演習を行う。

第3学年

人間学系科目

医療プロフェッショナリズムⅡ

2年生で学んだプロフェッショナリズムの基本を踏まえ、医療の現場でどうあるべきかという視点でプロフェッショナリズムを捉えていく。医師になる段階が進むごとに,自分自身の医師としてのプロフェッショナリズムも徐々に変化していくことだろう。その時期、その時点で考え抜き自分なりに最善の答えを自分自身の行動に反映させることが目標といえる。

医療倫理

医の倫理では、医師になるための必要な基本的事項として、医療と医学研究における倫理の重要性・患者の権利・医師の義務と裁量権・インフォームドコンセント・医療事故・人の死・尊厳死・安楽死を学びます。これらは臨床実習の基本的事項でもあり、その論点や重要性を具体的事例を論じながら考えていきます。

外国語科目

English For Medical PurposesⅢ

English For Medical PurposesⅢでは、主に循環器系、呼吸器系、消化器系、神経系の疾患について英文記事を読解し、疾患について自分自身の言葉で説明する練習を行います。また、将来、外国人患者や医療関係者ときちんとした対応が英語でできる医師の育成を目指し、医療面接に必要な英語表現を学習し、ロールプレイングや口頭発表などを通じてコミュニケーションスキルを身につけます。

横断的領域科目

情報科学Ⅱ

医療従事者のみならず自然科学、人文・社会科学においても、統計的手法は必須なものとなってきている。最近の技術の進歩により、ノートパソコンで高速に統計情報の処理ができるようになった。情報科学Ⅱでは、世界中で使われている無料の統計解析ソフトウェア R に、医療分野で必要になる統計解析機能を組み込んだフリーソフトウェア EZR を用い、実際に統計分析・検定を行うことにより、統計的手法への理解を深めることを目的とする。

基礎医学系科目

病理学

病理学では、臨床医学の学習に必要な各種臓器に特徴的な病変(胃癌、肝炎など)の原因、発生機序、形態学的特徴を学びます。また、臨床病態と病理学的変化との関連を理解します。講義では各種臓器に特徴的な病変について臨床病態との関連を含めて解説します。実習では顕微鏡を用いて代表的病変の形態学的特徴を観察します。

社会医学系科目

医学・医療と社会Ⅰ

医師法第1条では「医師は医療及び保健指導をつかさどることによって公衆衛生の向上及び推進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」と規定されています。ここで規定されている公衆衛生とはどのようなものかを学び、社会的存在として、人の出生から死亡にいたるライフサイクルの中で、様々な事象を医学的側面と社会的側面から考究し、疾病予防と健康増進の考え方とその重要性を理解します。

臨床医学系科目

緩和医療Ⅰ・漢方・CPC

がん患者さんの治療を支え、がん患者さんやご家族の希望を支える緩和医療・緩和ケアの実際について、がん疾患の軌跡と各病期から理解を深めます。全人的な苦痛を理解し、WHOがん性疼痛除痛三段階ラダーについて学びます。現代医学における漢方治療の役割を学びます。漢方医学の診断法と治療の考えを学び、漢方薬の薬理と副作用を理解して処方への考え方を理解します。CPCでは、病理解剖症例の病態病理を解明するため、臨床と病理が相互にdiscussion する会議を臨床病理カンファランス(Clinico-pathological conference: CPC)といい、病院の重要な会議の一つです。本講義では、実際にCPCを行った症例について、最初に臨床経過を理解し、臨床的問題点を挙げます。次に、病理解剖の肉眼所見及び組織所見を学びます。さらに、各臓器に認められる所見の重要性や関連性を考慮して、主病変と副病変を列挙しまとめます。最後に臨床病理相関を行い、直接死因を含めた病態を整理したうえで、剖検報告書を完成させます。これらのプロセスを通じて、CPCの全体像を把握すると共に、その重要性を理解します。

臨床医学 I

人間性と独創性の豊かな医師として人類社会の発展に寄与し得る者となるために、医学に関する問題を的確に把握しそれを自主的かつ総合的に解 決するための基本的知識、生涯を通じて自己学習し、正しい自己評価を可能にする基本的態度・習慣、医療を単に疾病の治療として把握するにとどまらず、患者 の背景にある精神的・社会的諸問題と関係づけて考える総合的視野を習得します。本講義は、1.循環器系 2.血液・造血器系 3.消化器系 4.腎・尿路系 5.神経系 6.呼吸器系7.内分泌・栄養・代謝系8.免疫・アレルギー9.感染症10.乳房11.重度侵襲12.臨床腫瘍学13.生殖機能14.妊娠と分娩15.成長と発達16.加齢と老化17.臨床遺伝学構成されます。

臨床実習

地域医療実習

初めて大学病院以外の診療の現場において、それまで机上の知識であった臨床医学がどのように活かされているのかを1週間の実習を通じて知る。患者や社会と医師・大学病院との関係などについて学ぶ。医学生としてプロフェッショナリズムを意識したマナーとコミュニケーションも重要な目標としている。

第4学年

人間学系科目

医療プロフェッショナリズムⅢ

医療プロフェッショナリズムは、第2学年から3か年を通じて学ぶ横断的科目の一つである。第4学年ではより臨床的内容に基づいたプロフェッショナリズムとして、救急現場、医療保険制度、国籍・分化・言語・性別などにおけるダイバーシティーなどに関し、アクティブ・ラーニングを通じて学生同士で学び合う。

外国語科目

English For Medical Purposes

English For Medical PurposesⅣでは国際医学雑誌などから抜粋した文献などを精読します。
英語での発信力の向上を目指し、医学分野のテーマを扱い、それについて英語で意見を述べ、ディスカッションする練習を行います。

横断的領域科目

情報科学Ⅲ

臨床において、論文等の情報収集、報告書等の文書作成、症例報告等の口頭発表が不可欠である。現代社会においてこれらの情報処理は全て電子的に行われる。情報科学Ⅲでは、臨床実習に向けて、EBMにおける情報収集、論文執筆やプレゼンテーション作成に役立つソフトウェアの使い方、情報処理に伴う著作権や個人情報の扱い方、医療情報システムの仕組み等、臨床において必要となる情報処理に関する知識とスキルを身につける。

基礎医学系科目

グループ別自主研究

グループ別自主研究では、基礎医学の講義・実習と臨床医学が終了した時点で、再び基礎医学を学びます。自らの希望するテーマを選び少人数で基礎医学講座に配属されます。 研究者が何を考え、悩みどのような方法論で問題を解決しているのかを身をもって体験します。研究者との接点が将来の学生諸君の医学への取り組みに良い結果をもたらすと考えています。考える能動的学修を中心とします。

社会医学系科目

医学・医療と社会Ⅱ

医師法第1条では「医師は医療及び保健指導をつかさどることによって公衆衛生の向上及び推進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」と規定されています。社会と健康・疾病とのかかわりを理解し、地域保健活動、保健医療制度と医療資源、法医学的事象、関係法規等についての知識を習得します。

法医学

医師が日常臨床の中でかかわりうる法的問題点、異状死の死因究明に係る問題点を法医解剖事例、裁判例等をもとに、医師として、どのように対応すべきかを理解し、実践できるようにする。また、事件・事故・中毒・虐待等の類型的事例、医療事故、医事紛争等の不測の事態に陥った時、順守すべき法、倫理規定等に従って、自ら対応を考え、関係者と協議しつつ実践できるようにする。

臨床医学系科目

医療安全Ⅰ

本学の医療の質 安全管理学は医療安全や質の向上を目的に人のパフォーマンスを対象とした「実践の科学」と捉え、医療現場に「医療安全文化」を構築する事を目的としている。医療における安全管理の理論を理解するとともに、臨床現場における取り組みの実際を知り、医療安全に関する考え方を理解する。安全で信頼される医療を提供すための医療チームの一員としての必要な知識と行動について学習する。

臨床医学 Ⅱ

人間性と独創性の豊かな医師として人類社会の発展に寄与し得る者となるために、医学に関する問題を的確に把握しそれを自主的かつ総合的に解決するための基本的知識、生涯を通じて自己学習し、正しい自己評価を可能にする基本的態度・習慣、医療を単に疾病の治療として把握するにとどまらず、患者の背景にある精神的・社会的諸問題と関係づけて考える総合的視野を習得します。本講義は、1.腎・泌尿器系 2.生殖機能 3.妊娠と分娩 4.成長・発達・加齢 5.運動器系 6.皮膚系 7.耳鼻咽喉・口腔系 8.眼・視覚系 9.精神系 10.感染症系 11.免疫・アレルギー 12.重度侵襲/物理因子 13.救急・麻酔・中毒 14.基本的診療知識 15.症候・病態論で構成されます。

基本的診療知識・技能

基本的臨床技能実習では、第5学年の臨床実習に備えるものであり、臨床医学の最も基礎となる患者への接し方、診察の記載、さらに実際的診察法、外科基本手技、心肺蘇生法を習得します。また、主要症候について鑑別診断の方法を習得し、「臨床医学III」を充実したものとすることが出来る能力を習得します。

第5学年

横断的領域科目

行動科学・患者学Ⅱ

行動科学とは、医学のみならず、社会学や心理学等に含まれる知識や技術を統合した学問です。医療者が保健医療の現場で行動科学の視点を活用することで、患者およびその家族の気持ちにより寄り添った診療につなげていくことを期待しています。本講義では人々の行動、認知、心理をキーワードにした行動科学の基礎的な理論を習得します。

臨床医学系科目

医療安全Ⅱ

多様な医療事故の事例から、医師として安全で質の高い医療を提供することの責任・使命を理解します。医師として医療事故を起こさない・繰り返さないためには、他山の石に学ぶことが重要です。本講義では、法律的な視 点・臨床的な視点から過去の医療事故を紹介し、「患者及び医療者にとって、良質で安全な医療」を実現するために必要な 医師のコンピテンシーについて学習します。

緩和医療Ⅱ・診療録の記録

がん患者さんの治療を支え、がん患者さんやご家族の希望を支える緩和医療・緩和ケアの実際について、がん疾患の軌跡と各病期から理解を深め、がん医療の中で緩和医療・緩和ケアの役割を説明できる様にすること、加え、がん患者の症状緩和について説明できる様にします。また、模擬患者の医療面接を通じて得た患者情報から、POSに則ったカルテ記載を実施できる様にします。

臨床実習

臨床医学 III

臨床医学Ⅲでは、臨床医としての基本的能力を身につけるための望ましい態度、各科全般におよぶ知識と技能の基本を習得します。 指導医のもと、診療チームの一員として病棟及び外来において、患者の診察、診療記録、治療計画、基本的診療技能を含む患者マネジメント、クルズス、症例検討を行います。

第6学年

臨床医学

臨床医学 IV

人間性と独創性の豊かな医師として人類社会の発展に寄与し得る者となるために、医学に関する問題を的確に把握しそれを自主的かつ総合的に解決するための基本的知識、生涯を通じて自己学習し、正しい自己評価を可能にする基本的態度・習慣、医療を単に疾病の治療として把握するにとどまらず、患者の背景にある精神的・社会的諸問題と関係づけて考える総合的視野を習得します。
本講義は、臓器別集中講義で、1.消化器・肝胆膵 2.腎・泌尿器・循環器 3.神経・内分泌・代謝 4.呼吸器・血液・感染症・アレルギー 5.精神・内科診断・医療面接・診察・救急・麻酔・中毒・ショック 6.産婦人科 7.小児科 8.運動器・膠原病・皮膚・頭頸部で構成されます。

臨床医学 Ⅴ

選択実習では、附属病院及び学外の病院、さらには姉妹校である米国カンザス大学医学部で約1ヶ月間にわたり自らが希望する講座で臨床実習を行います。

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