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2012/11/12 エクソソームを用いたドラッグデリバリーシステムにより、乳がんモデルマウスの腫瘍を抑制~JST支援プログラム採択研究~

  • 研究活動

平成24年 11 月 13 日
 
東京医科大学分子病理学講座の大野慎一郎助教、黒田雅彦主任教授らの研究チームは、国立がん研究センター落谷孝広分野長、東京大学医科学研究所の後藤典子特任准教授、株式会社ボナック(本社:久留米市)大木忠明取締役らと共同で、上皮成長因子受容体(EGFR)に高い親和性を持つ人工ペプチド(GE11)を膜上に発現するエクソソームを作製し、腫瘍抑制性microRNAを内包したGE11提示型エクソソームが乳がんモデルマウスで腫瘍の発達を効率よく抑制することを示しました。
この研究は、科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援プログラムA-STEP採択研究によるものです。また、本研究成果は、米国細胞遺伝子治療学会の学会誌であるMolecular Therapy誌(Nature Publishing Group)に2012年11月号に掲載されました。
 
核酸医薬は抗体医薬に続く次世代の分子標的治療薬として注目されています。しかし、血液中の酵素によって容易に分解されてしまうため、患部局所まで安定的に薬剤を届けるドッラグデリバリーシステムの開発が求められています。エクソソームは、各種の細胞が分泌する50~100nm程度の膜小胞体で、近年の研究からエクソソームがmicroRNAなどの核酸を内包し、細胞間分子輸送に関与することが明らかとなってきました。そこで研究グループは、生体内で核酸の運搬体として機能しているエクソソームを応用して、核酸医薬のドラッグデリバリーシステムを構築することが出来ないかと考え、研究を行ってきました。
まず始めにエクソソームに標的特異性を付加する必要があると考え、各種のがんで高発現するEGFRに対して親和性をもつGE11を膜上に発現するエクソソームを作製しました。GE11はファージディスプレイ法で単離されたEGFRに親和性を持つ13アミノ酸のペプチドです。膜発現型GE11分子をデザインし、エクソソーム産生細胞に発現させることで、エクソソームの膜上にGE11を提示させることに成功したということです。続けてGE11提示型エクソソームがEGFR高発現腫瘍に対して親和性があるかの検証を、EGFR高発現乳がん細胞株を用いて行いました。in Vitroの実験では腫瘍細胞への高い親和性が確認され、乳がんモデルマウスでは尾静脈投与したGE11提示型エクソソームが腫瘍へ高効率に集積しました。最後に、腫瘍抑制性microRNAであるlet-7aをGE11提示型エクソソームに内包し、乳がんモデルマウスに投与した実験では乳がんの発達が有意に抑制されました。
なお、この研究では、エクソソームがドラッグデリバリーシステムの運搬体として応用できる可能性が示されていれていますが、同時に、高次生体構造物であるエクソソームを臨床応用する際の問題点として、免疫原性や低コスト多量生産技術の開発など、解決しなくてはならない課題についても言及されています。
 
本研究のポイント
 
  • ●一般的にリン脂質等で合成された人工キャリアーの多くは、非自己として免疫細胞に排除されてしまうが、iPS細胞等の
      自己細胞からエクソソームを回収出来れば、血中滞留時間の長い安定したキャリアーとなり、ドラッグデリバリーシステ
      ム開発の飛躍的な進展が期待できる。
  • ●GE11エクソソームによるDDSは、乳がん以外にも肺がん、大腸がん等のEGFRを高発現するがんの治療に応用できる可能
      性がある。
  • ●腫瘍で発現が低下した癌抑制性microRNAの補充療法はまだ一般的でない。しかし、microRNAは複数の標的mRNAに作
      用することから、複数の癌遺伝子を標的とした効果が期待できる。
 
用語解説
 
  • 上皮成長因子受容体:Epidermal Growth Factor Receptor (EGFR)は上皮成長因子(EGF)をリガンドとするチロシンキナ
      ーゼ型受容体である。各種のがんで高発現し、細胞増殖、細胞死の抑制、血管新生、浸潤、転移に関与する。
  • GE11ペプチド:ファージディスプレイ法にて単離されたEGFRに親和性をもつ13アミノ酸のペプチド。EGFRに結合
     するが、下流のシグナルは活性化させない。
  • エクソソーム:各種の細胞が分泌する50~100nm程度の膜小胞体
  • microRNA (miRNA):20〜25塩基ほどの短い1本鎖RNAでタンパク質はコードしていない。現在ヒトで約2000
     種類microRNAが確認されている。相補
     的配列を持つmRNAに結合し、翻訳抑制もしくはmRNAの分解に働く。完全に相補的でなくても作用するため、一種類の
     microRNAが多種のmRNAを抑制する。
 
【本件に関する問い合わせ先】
学校法人東京医科大学 経営企画室
広報担当 田崎・日高 03-6302-0289(代表)