免疫学分野

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主任教授
横須賀 忠
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概要

免疫学分野では、獲得免疫系の司令塔の役割を担うT細胞のシグナル伝達機構の基礎研究を行っています。特にシグナル伝達を"観る"という観点から、T細胞の活性化に必須な「免疫シナプス」、それを構成する活性化シグナルユニット「マイクロクラスター」を、超解像顕微鏡(2014年ノーベル化学賞)を用いた革新的手法によって明らかにするなど、免疫細胞における分子イメージングの先駆的研究を推進してきました。このミクロな視点からの時空間的研究によって、T細胞の活性化制御機構のみでなく、疲弊細胞の回復とがん免疫の賦活化、免疫不応答のメカニズム、ユビキチンによるT細胞シグナルの終焉と発がん制御、シグナル伝達を担う新たな細胞骨格の機能、メカノトランスダクション、液液相分離と細胞内輸送など、これまで分からなかったさまざまな免疫応答の詳細が明らかになりつつあります。

またトランスレーショナルリサーチの観点から、これら基礎研究を通して「がん」に対する免疫賦活化と治療への応用を目指した研究を精力的に展開しています。2018年のノーベル医学生理学賞受賞対象となった「免疫チェックポイント」療法は、すでに第4のがん標準治療となりました。当研究室ではこれに先駆けて免疫チェックポイント分子PD-1やCTLA-4が抑制性のシグナルユニットとして機能することを明らかにしてきました。現在も一連の免疫チェックポイント分子によって本来がん細胞を殺傷するT細胞がどのようにして「疲弊」状態に陥っているか、分子イメージングからそのメカニズムの解明に取り組んでいます。また、国内外の第一線のがん免疫研究所との共同研究を基に、免疫チェックポイント療法に続く第二のブレイクスルー:キメラ抗原受容体CAR-T細胞や二重特異性抗体BiTEのがん細胞殺傷作用における分子メカニズムの解明を、CARマイクロクラスターやBiTEマイクロクラスターという視点から進め、1細胞1分子イメージングでなければ分からなかった新たなメカニズムが次々に明らかになってきました。

また自己免疫疾患やアレルギーは、胸腺での「自己」と「非自己」の認識が障害されたことの結果と考えられています。こうした異常免疫応答のメカニズムを解明することは、免疫疾患の原因を究明する上できわめて重要です。免疫学分野では、文部科学省新学術領域研究「ネオ・セルフ」(平成28年度〜令和2年度)において、T細胞を活性化させ病態を形成する新しい自己の形を概念化し、さらに学術変革研究A「自己指向性免疫」(令和5年度〜6年度)で革新的分子イメージングを用いた自己非自己の認識機構解明にも引き続き挑戦しています。

教育内容

主な研究領域(研究内容)

  • T細胞シグナル研究
  • 超解像一分子イメージング研究
  • 免疫チェックポイント療法の分子機構の解明
  • キメラ抗原受容体CAR-T細胞研究

  • 二重特異性抗体BiTE研究
  • ヒト化マウスを用いたin vivoがん免疫療法研究
  • 胸腺選択と自己と非自己の認識機構の研究

担当科目名名称

分子免疫学

講義概要

免疫学分野では、発生学、分子生物学、細胞生物学、分子イメージング学、および免疫学的な手法を駆使し、免疫細胞受容体を介する細胞内シグナル伝達の研究を行っています。またこれら基礎研究を基盤として、がんに対する免疫反応の機構を理解し、免疫チェックポイント療法やCAR-T細胞療法、二重特異性抗体療法の進展の基盤となる分子機構の解明にも取り組んでいます。"百聞は一見に過ぎず"分子イメージングによる先端的研究は、それらシグナル伝達を目に見える形で理解を深め、これまでとは全く異なった局面から隠されたメカニズムの解明を我々に提案してくれます。

これらの基礎研究を通して、大学院講義では、近年報告され特に研究結果として重要な、またこれから実験を進める上でアイデアとなる生産的な論文を毎回取り上げて紹介すると共に、スモールグループ内でもディスカッションを行い、科学的に考える力を養います。また実習では演習を通して専門的な知識・技能を修得できるよう教職員が支援し、基礎研究と臨床医学の双方に精通した視野の広い次世代型の研究者育成を目指します。

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