2022/07/20
研究活動 プレスリリース

【プレスリリース】薬の種類や多剤併用が及ぼすヒト腸内細菌への全貌を解明 ~ 世界に類を見ない腸内細菌叢ビッグデータベースを構築 ~

  東京医科大学(学長:林 由起子/東京都新宿区)消化器内視鏡学分野の永田尚義 准教授と、河合隆 主任教授、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構の西嶋傑 次席研究員(現:欧州分子生物学研究所)、理工学術院の服部正平 教授(現:東京大学名誉教授)、国立国際医療研究センター(理事長:國土 典宏/東京都新宿区)消化器内科の小島康志 医長、糖尿病研究センターの植木浩二郎 センター長、感染症制御研究部の秋山徹 特任研究部長、国府台病院の上村直実 院長(現:国府台病院名誉院長)らの研究グループは、日本人の大規模腸内マイクロバイオームデータを構築し、様々な種類の薬剤や薬剤の投与数に伴う腸内細菌叢の変化、細菌の遺伝子機能の変化、薬剤耐性遺伝子の変化を網羅的に調べ、以下の知見を得ました。本研究成果は「Gastroenterology」 (IF= 33.883) のオンライン版に掲載されました(現地時間2022年7月1日公開)。

【本研究のポイント】

  • 日本人約4,200例を対象に、糞便のショットガンメタゲノムシークエンス1)を行い、膨大な生活習慣や臨床情報と腸内微生物叢情報を統合した世界初の大規模マイクロバイオームデータベースを構築しました。
  • 腸内細菌叢に影響を与える外的・内的要因を網羅的に調査し、薬剤投与が食事、生活習慣、疾患よりも腸内細菌叢に与える影響が強いことを発見しました。
  • 腸内細菌叢に影響を与える薬剤の種類を詳細に調べ、影響の強さでランキング化したところ、消化器疾患薬や糖尿病薬の影響度が高いことを発見しました。
  • 薬剤の多剤併用(ポリファーマシー)による腸内細菌種の変化、細菌の遺伝子機能プロファイルの変化、薬剤耐性遺伝子プロファイルの変化を同定しました。
  • 個々の薬剤や多剤併用による腸内細菌叢の変化は、薬剤の使用中断や投与数の減少により元の状態にまで戻すことができることを見出しました。

 今回の研究結果は、様々な種類の薬剤と腸内細菌叢の関連を網羅したカタログ(辞書)を提供したことになり、医師や患者が薬剤選択をする上で有用な知見となりえます。また、薬剤により変動した特定の腸内細菌が長期薬剤使用や多剤併用により生じる副作用を予測するバイオマーカーになりえます。さらに、特定の腸内細菌をターゲットとした薬剤関連疾患の発症予防や治療法の開発につながることが期待されます。

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