東京医科大学(学長:林由起子/東京都新宿区)医学総合研究所分子細胞治療研究部門の落谷孝広教授、東京慈恵会医科大学エクソソーム創薬研究講座の藤田雄講師、内科学講座呼吸器内科の藤本祥太助教、荒屋潤教授、桑野和善講座担当教授、外科学講座呼吸器外科の大塚崇講座担当教授らの共同研究グループは、加齢とともに発症率が高まる肺疾患である特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis: IPF)に高率に合併する肺がんの悪性化に関わる要因が、IPFの病態において重要な老化した線維芽細胞が分泌するエクソソーム(細胞外小胞)により促されていることを発見しました。
体内における線維化は、肝臓や肺などのさまざまな臓器で生じることが知られています。これらは高率にがんを合併することから、臓器線維症の病態理解や新規の治療法開発はがんを予防、早期発見する上でも非常に重要であると認識されています。特にIPFは、診断後平均生存期間も3-5年の難病で、有効な治療法が十分確立されていません。さらに、肺がんを合併するIPF患者は、肺がんを合併しないIPF患者と比較しても、予後が悪いことも分かっています。本研究グループは先行研究にて、老化した線維芽細胞が分泌するエクソソームが、IPF病態の悪化に関与する気道上皮細胞老化を促進することを発見注1しており、今回の発見では、同様の線維芽細胞由来エクソソームが、合併するがんの増悪を促進させることを明らかにしました。これにより、IPFに合併する肺がん病態のより詳細な解明につながり、ひいては新たな治療開発へとつながることが期待されます。
この研究成果は、米国呼吸器学会が発刊する「American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology」オンライン版に掲載されました(日本時間 2023年2月28日公開)。