東京医科大学(学長:林 由起子/東京都新宿区)泌尿器科学分野の大野芳正主任教授、小野 朝助教、放射線医学分野の斎藤和博主任教授らの研究グループは、MRIの見かけの拡散係数が臨床的に重要な前立腺がんの予測に利用できる可能性を明らかにしました。
この研究成果は、日本癌治療学会が発刊する「International Journal of Clinical Oncology」に掲載されました(日本時間 2023年3月24日公開)。
【本研究のポイント】
- MRIで前立腺移行領域に前立腺がんが疑われる病変があり、前立腺針生検を行った102人についてMRIの見かけの拡散係数(ADC値)と臨床的に重要ながん(患者の予後に関わるグリーソンスコア7以上のがん)の存在との関係を解析しました。
- 102人中50人(49%)にがんがみつかり、このうち38人が臨床的に重要ながんであり、臨床的に重要ながんの検出率は37.3%(38/102)でした。臨床的に重要ながんが見つかった病変のADC値は、良性組織もしくは臨床的に重要でないがんであった病変のADC値に比べて有意に低値でした。特に病変部の最小ADC値が、臨床的に重要ながんの予測因子でした。臨床的に重要ながんを予測するための最小ADC値のカットオフ値を解析すると595 µm2/s となりました。
- 最小ADC値のカットオフ値を用いて生検の適応を決めるとすると、102人のうち49人が「生検の必要あり」、53人が「生検の必要なし」と判断されることになります。「生検の必要あり」と判断された49人中29人に臨床的に重要ながんが見つかることになり、がんの検出率は59.2%に改善します。また「生検の必要なし」と判断された53人のうち、生検結果が良性組織または臨床的に重要でないがんであった44人(68.7%)では「不必要な生検」を避けられることになります。このようにMRIの最小ADC値を利用することでがんの検出能を改善できる可能性があることがわかりました。しかし、「生検の必要なし」と判断された9人(23.7%)は、生検を行わないことにより臨床的に重要ながんが見逃されることになるので注意が必要です。
- 最小ADC値により前立腺移行領域において臨床的に重要ながんの予測が可能であり、初回生検でがんが見つからなかった場合の再生検の適応判断にも利用可能と考えています。
■プレスリリースはこちら>>
■東京医科大学 泌尿器科学分野HPはこちら>>