2023/05/23
研究活動 プレスリリース

【プレスリリース】AYA世代の希少がん「間葉性軟骨肉腫」のモデル化に成功 ~細胞分化と発がんの関係を解明し、治療に効果のある薬剤を発見~

【概要】
 東京医科大学(学長:林 由起子/東京都新宿区)医学総合研究所未来医療研究センター実験病理学部門の中村卓郎特任教授らが、公益財団法人がん研究会がん研究所がんエピゲノムプロジェクト 田中美和主任研究員、丸山玲緒プロジェクトリーダーらとの共同研究で、間葉性軟骨肉腫のモデル化に世界に先駆けて成功し、融合遺伝子HEY1-NCOA2による軟骨細胞分化への干渉機構を明らかにしました。

 間葉性軟骨肉腫は、AYA世代(思春期・若年成人)に発生する希少な軟骨性悪性腫瘍で、増殖能力が高く高悪性度の難治性肉腫です。成人型の軟骨肉腫と異なり、胎児〜新生児期の軟骨発生を模倣するような形態を示すことが特徴で、発生機序は謎に包まれていました。今回、原因融合遺伝子HEY1-NCOA2をマウス軟骨前駆細胞に導入したモデルを開発し、単一細胞解析やエピゲノム動態を調べることによって病態を克明に解析しました。HEY1-NCOA2が、軟骨分化に重要とされてきたRUNX2、HEY1、SOX9といった転写因子群の機能を修飾する働きを有し、発がんにおける新しい分子機構が明らかになりました。さらに、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬が間葉性軟骨肉腫の治療に効果があることがわかり、今後の治療に有用な知見を得ることが出来ました。

 この研究成果は、2023年5月22日(米国時間)のJCI Insight誌(オンライン版)に掲載されました。

【本研究のポイント】

  • HEY1-NCOA2遺伝子をマウス新生児の軟骨前駆細胞に発現させると、ヒト間葉性軟骨肉腫が再現された。
  • マウス間葉性軟骨肉腫は、未分化間葉性細胞と硝子軟骨から形成され、単一細胞レベルでの遺伝子発現解析により、細胞分化の系譜と対応する遺伝子発現が明らかとなった。
  • HEY1-NCOA2はスーパーエンハンサーを含むアクティブエンハンサーに結合し、野生型HEY1の発現を亢進させて、未分化細胞の増殖の維持に寄与した。
  • HEY1-NCOA2はRUNXファミリー転写因子と結合し、RUNX2により制御される軟骨分化プログラムを改変した。
  • ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬パノビノスタットの投与によりマウス間葉性軟骨肉腫の顕著な増殖阻害が達成された。

 
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