東京医科大学(学長:宮澤啓介/東京都新宿区)、細胞生理学分野 横山詩子主任教授、救急・災害医学分野 奥村滋邦助教らの研究グループは、心筋梗塞におけるステント留置の後期合併症であるステント内再狭窄に、プロスタグランディンE(PGE2)受容体EP4シグナルによる糖蛋白fibulin-1の産生亢進が関与することを明らかにしました。
我々はEP4レポーターマウスを用いて、大腿動脈における血管傷害後2週で内膜肥厚部の血管平滑筋細胞に顕著にEP4とfibulin-1の発現が顕著に増加することを見出しました。EP4ヘテロ接合体欠損マウス、EP4過剰発現マウス、及びfibulin-1欠損マウスを用いて、EP4刺激により増加したfibulin-1はTGF-β/Smad3を介して血管平滑筋細胞の遊走増殖を促進することを明らかにしました。さらにEP4阻害薬の経口投与は、野生型マウスの血管傷害後の内膜肥厚を減少させることがわかりました。
薬剤溶出ステントの進歩は、血管の内膜肥厚形成の減少に大きく貢献していますが、いまだ治療効果は十分とはいえません。今回の研究によりEP4アンタゴニストの経口あるいは局所投与、fibulin-1のダウンレギュレーションは内膜肥厚形成を抑制する新たな治療戦略となる可能性が示されました。
この研究成果は、2024年9月22日、国際雑誌「Cardiovascular Research」に掲載されました。
【本研究のポイント】
- PGE2受容体であるEP4がTGF-β/Smad3を介してfibulin-1を増加させ、血管平滑筋細胞の遊走増殖を促進し内膜肥厚を形成させる。
- EP4アンタゴニストの経口投与は血管傷害後の内膜肥厚形成を抑制する。
【論文情報】
- タイトル:Spatiotemporal EP4-fibulin-1 expression is associated with vascular intimal hyperplasia
- 著 者:Shigekuni Okumura, Sayuki Oka, Takako Sasaki, Marion A. Cooley, Yuko Hidaka, Hana Inoue, Hitoshi Nishijima, Shin-Ichiro Ohno, Shota Tanifuji, Mari Kaneko, Takaya Abe, Masahiko Kuroda, Tadashi Yokosuka, Richard M. Breyer, Hiroshi Homma, Yuko Kato, Utako Yokoyama*(*:責任著者)
- 掲載誌名:Cardiovascular Research
- D O I:10.1093/cvr/cvae211
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