東京医科大学(学長:宮澤啓介/東京都新宿区)微生物学分野の中村茂樹主任教授、犬飼達也助教、修士課程大学院生(当時)の渡邊陸人らの研究グループは、ヒトが元来保有するマイクロRNA(miRNA)が、難治性感染症を引き起こす病原真菌、アスペルギルス フミガツスの標的病原性因子の発現を制御することを示しました。さらに、これまでmiRNAなどの核酸は、真菌の細胞壁を通過することが困難とされていましたが、真菌指向型ドラッグデリバリーシステム(DDS) を利用することでその問題を克服し、真菌症に対する核酸を用いた新しい治療法への応用の可能性を示すことに成功しました。本研究は、本学分子病理学分野の黒田雅彦主任教授、先端核酸医療講座の村上善基客員教授、東京大学大学院工学系研究科のカブラル オラシオ准教授らと共同で行われました。本成果は、抗真菌薬の新規開発が困難な現状において、真菌感染症に対するmiRNAを用いた新たな治療戦略の可能性を示したものであり、核酸創薬への応用が期待されます。
本研究成果は、2025年5月19日、国際誌「Scientific Reports」に掲載されました。
【本研究のポイント】
- 真菌の病原性因子メラニン合成に関与するalb1遺伝子を標的とするmiRNAを真菌に直接導入することで遺伝子およびタンパク質の発現量が低下し、メラニン合成量が低下しました。
- miRNA導入によりメラニン合成量の低下した菌体は、酸化ストレス抵抗性が解除され、好中球により排除されやすくなることを示しました。
- 真菌指向型DDSデバイスを利用することで、強固な細胞壁が存在する真菌の細胞質内にmiRNAを導入することに成功しました。
【論文情報】
タイトル:Fungus-Targeted Nanomicelles Enable MicroRNA Delivery for Suppression of Virulence in Aspergillus fumigatus as a Novel Antifungal Approach
著 者: Tatsuya Inukai, Rikuto Watanabe, Yoshiki Murakami, Horacio Cabral, Masahiko Kuroda and Shigeki Nakamura*(*:責任著者)
掲載誌名:Scientific Reports
DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-025-02742-0
■プレスリリースはこちら>>
■微生物学分野HPはこちら>>