東京医科大学 医学部医学科 組織・神経解剖学分野 柏木太一助教(東京医科歯科大学 非常勤講師併任)は、東京医科歯科大学 難治疾患研究所 幹細胞制御分野 田賀哲也教授らとの共同研究で、胎生期のマウス脳において血管が未発達な時期の低酸素環境下では、神経幹細胞が血管内皮細胞増殖因子(VEGF-A)を分泌し自らに作用させて自己複製を促進するという生存戦略によって脳の形成に寄与することをつきとめました。この研究は文部科学省科学研究費補助金ならびに難治疾患共同研究拠点経費の支援のもと、主に高沢友輝大学院生(東京医科歯科大学 難治疾患研究所 幹細胞制御分野:研究当時)によって行われたもので、その研究成果は、国際科学誌 Inflammation and Regeneration(インフラメーション アンド リジェネレーション)に、2023年2月1日にオンライン版で発表されました。
【本研究のポイント】
- 脳を構成する細胞群は神経幹細胞から分化しますが、脳が形成途上にある胎生期の神経幹細胞は分化すると同時に自らを維持し拡大するための自己複製が必要です。
- 神経幹細胞の自己複製にはそれを促す環境が重要ですが、毛細血管網が未発達な胎生期半ばの脳における低酸素環境下での自己複製の仕組みは未解明でした。
- 本研究は低酸素環境下にある神経幹細胞が、従来血管形成を促すことが知られているVEGF-Aを分泌し自らに作用することで自己複製させるという新たな仕組みの存在を明らかにしました。
- 本研究はマウス胎生期脳における神経幹細胞が低酸素環境に適応して自己複製する生存戦略を明らかにしたもので、今後ヒトにおける神経幹細胞制御に関する研究への展開が期待されます。
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