アトピー外来

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、幼少時期に発症し再燃を繰り返しながら各年齢層に特徴的な皮膚症状を呈する病気です。 皮膚症状の原因として、アレルギー反応、皮膚のバリアー機能低下、かゆみなどが要因で悪循環が生じます。悪化因子は、個人により原因が異なる病気です。以前は、幼少時期だけの病気といわれていましたが、 近年は成人発症の方にも多く認められます。当科にも幼児から高齢者まで幅広い年代の方が受診されています。

アトピー性皮膚炎の当科における治療方針

日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎ガイドラインに従って治療を行っています。治療は外用薬については顔面・頸部はタクロリムス軟膏(プロトピック軟膏®)やmild クラスのステロイド軟膏(ロコイド軟膏®やキンダベート軟膏®)を中心に使用し、症状に合わせてこれらの軟膏の間歇療法を行っています。体幹・四肢は皮膚の症状によりますが、ステロイド軟膏と保湿剤を中心に治療しています。例えば、厚さのある病変についてはvery strongクラス(アンテベート軟膏®、マイザー軟膏®等)で治療を開始し、症状の軽快とともにstrongクラス(メサデルムクリーム®、リンデロンVG 軟膏®等)に切り替え、プロアクティブ療法(週1-2回外用する治療方法)を積極的に導入し、悪化を未然に防げるように指導します。また、十分に外用できていない患者様には、看護師による塗り方指導を行っております。外用療法で改善がみられない場合、免疫抑制薬(ネオーラル®)を一時的に服用し、またナローバンドUVBを用いた紫外線療法も行っています。さらに、重症例に関しては生物学製剤(デュピクセント®、アドトラーザ®、ミチーガ®)やJAK阻害薬(オルミエント®、サイバインコ®、リンヴォック®)を使います。高い効果を認めますが、それぞれの薬でいくつかの注意点があります。担当医と相談しながら治療方針を決めます。デュピクセント®、ミチーガ®は在宅自己注射が可能なため、通院回数を減らすことができます。

最近、外用剤でも新薬が登場しました。JAK阻害薬軟膏(コレクチム®)はステロイドとは異なる免疫を抑制する薬剤が入った軟膏です。生後6か月のお子様から使用可能です。生後3か月から使用可能なPDE4阻害薬(モイゼルト®)という新しい外用薬も2022年から治療に使えるようになりました。この軟膏もステロイドは入っておらず、マイルドに炎症を止めるため、軽症なアトピー性皮膚炎の方に適しております。2歳から使用可能です。

小児のアトピー性皮膚炎は、皮膚からアレルゲンが侵入し、アトピー性皮膚炎が発症するといわれておりますが、食物アレルギーが関与している場合は、小児科アレルギー外来と連携しながら治療しています。

  • 伊藤ら、東京医科大学病院皮膚科でデュピルマブによる治療を行ったアトピー性皮膚炎患者201例の統計 アレルギー. 2023
  • Numata T,et. al. Correlation of the clinical severity of atopic dermatitis with ocular comorbidities. J Cutan Immunol Allergy. 2020

その他アレルギー疾患

蕁麻疹

蕁麻疹の中で最も多いのは、慢性特発性蕁麻疹です。6週間以上連日のみみずばれができ、日常生活に影響します。当科の治療方針は、第二世代抗ヒスタミン薬(ビラノア®、ルパフィン®、デザレックス®等)とロイコトリエン拮抗薬(キプレス®)とヒスタミンH2受容体拮抗薬(ガスター®)の3剤からはじめます。効果不十分な場合は、オマリズマブ(ゾレア®)を月1回皮下注射します。なおオマリズマブは、在宅自己注射が可能なため、通院回数を減らすことができます。またコリン性蕁麻疹、日光蕁麻疹、特発性後天性全身性無汗症(AIGA)などの検査・治療も行っております。AIGA疑いの場合は、入院加療となります。
2024年2月に、デュピクセント®が、慢性特発性蕁麻疹に追加承認されました。

  • 伊藤ら、慢性特発性蕁麻疹に対するオマリズマブ投与患者105例の検討 日臨皮会誌,2021
  • Kobayashi T et.al. Two cases of acquired idiopathic generalized anhidrosis successfully treated by steroid pulse therapy. J Dermatol. 2014
  • Iwasaki A, et.al. A case of cholinergic urticaria with localized hypohidrosis showing sweat gland eosinophilic infiltration. Allergol Int. 2017

大人のアレルギー

近年、成人食物アレルギーの患者さんが大変増えております。花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)や小麦アレルギー(小麦運動誘発性アナフィラキシーを含む)やアニサキスアレルギーの患者さんが目立ちます。原因食品を同定するために血液検査やアレルギー皮膚テスト(プリックテスト)を行っています。未知なアレルゲンの場合は、当科の研究室で原因抗原を同定します。診断のついた患者様には、アドレナリン自己注射製剤 (エピペン®)の処方と生活指導をしています。当院は、アナフィラキシーショックで救命救急センターへ搬送された患者さんの、原因究明と生活指導を行っております。また、食物以外の即時型アレルギーも対応いたします。

  • 城ら、東京医科大学病院皮膚科で診断したアナフィラキシー症例の統計 アレルギー. 2019
  • 小林ら、都市部の救命救急センターに搬送されたアナフィラキシー症例の検討 日臨救急医会誌. 2020
  • 瀬下ら、ゼラチン貼付剤でアナフィラキシーショックを生じた1例 皮膚科の臨床 2022
  • 小林ら、緑豆もやしによるアレルギーの2例 アレルギー 2023
  • Numata T, et. al. A case of oral allergy syndrome due to star fruit sensitized from atopic hands. Allergol Int. 2015
  • Kobayashi T, et.al, A case of contact urticaria inducing anaphylaxis due to liliaceae vegetables in a hand eczema patient. Allergol Int. 2015
  • Kobayashi T, et.al. Eighteen cases of wheat allergy and wheat-dependent exercise-induced urticaria/anaphylaxis sensitized by hydrolyzed wheat protein in soap. Int J Dermatol. 2015
  • Jo R, et.al. A case of immediate type of food allergy due to parvalbumin from soft-shelled turtle (Trionychidae) occurring in the working environment. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2016
  • Numata T, et.al. Acetaminophen anaphylaxis diagnosed by skin prick test. Allergol Int. 2016
  • Kobayashi T, et. Al. A case of anaphylaxis due to alpha-mannosidase from Auricularia. Allergol Int. 2019
  • Abe N, et. al. A case of anaphylaxis due to fish collagen in a gummy candy. Allergol Int. 2020
  • Ito T, et. al. A case of food allergy due to three different mushroom species. Allergol Int. 2020
  • Seshimo H, et.al. A case of anaphylactic shock induced by mealworm antigen in the bite of a Japanese flying squirrel. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2021

皮膚肥満細胞症

皮膚肥満細胞症は肥満細胞が増殖する疾患です。小児例が多いですが、成人例もあります。皮膚が茶色のしみになる場合、かたまりを認める場合、水疱を認める場合と様々です。病変部を擦るとみみずばれが生じ(ダリエー徴候)、診断時に有用です。当科では、WHOの診断基準に従っております。病変部の皮膚を2か所採取し、病理検査と東京医科大学倫理委員会で承認された遺伝子検査を行います。遺伝子変異を認めた場合は、小児科や内科と併診し多臓器病変を確認します。
皮膚肥満細胞症の治療薬は現在ありません。しかし、小児の場合は自然治癒することが多いです。一方、成人例の場合は、自然治癒はしませんので、定期的な受診が必要です。症例によって対応方法が異なります。アナフィラキシーショックが生じるケースもあるので、患者さんの症状にあった治療をいたします。

  • 伊藤友章色素性蕁麻疹 皮膚疾患最新の治療2019-2020. 南江堂. 2019
  • 瀬下ら、黄白色調結節を呈したmastocytomaの1例. 臨皮 2021
  • 星野ら、小児に生じたDiffuse cutaneous mastocytosisの1例. アレルギー 2022
  • 伊藤友章肥満細胞症の発症メカニズムと分類と診断. 臨床免疫・アレルギー科 2023
  • 伊藤友章臨床免疫・アレルギー科編集委員会. 2023: 536-541.
  • 瀬下治孝肥満細胞症のダーモスコピー像. 皮膚科編集委員会 編. 2023: 592-597.
  • 伊藤友章皮膚肥満細胞症 : 最近のトピックスの紹介. 皮膚科編集委員会 編. 2023: 523-530.
  • 伊藤友章WHO血液腫瘍分類とInternational Consensus Classification (ICC) 2022による肥満細胞症の解説と皮膚肥満細胞症の診断方法. 皮膚科編集委員会 編.  2023: 602-606.
  • 石黒暁寛非特異的な臨床像を呈する小児皮膚肥満細胞症. 皮膚科編集委員会 編. 2023: 546-549.
  • 深浦彰子KIT 遺伝子変異(Asp419del)が検出された斑状丘疹状肥満細胞症の 1 例. アレルギー. 2023. 906
  • Ito T, et. al. A case of Japanese pediatric cutaneous mastocytosis with disparate clinical classifications of maculopapular cutaneous mastocytosis and mastocytoma, J Cutan Immunol Allergy, 2020

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研究・業績