「患者に優しい医療(低侵襲医療)」の
実現に向けた研究活動
11 患者に優しい予防医学に関する研究 Research
Research
組織・神経解剖学分野
学習・記憶力低下を未然に防ぐための基盤研究:
海馬神経幹前駆細胞とアストロサイトを識別する転写因子を発見
海馬は記憶に欠かせない領域で、老化に伴うニューロンの減少、アストロサイトの増生が記憶力低下を招きます。これを予防するために、海馬における新しいニューロン及びアストロサイト産生メカニズムの解明が不可欠です。私達の最新研究では、複数の転写因子の組み合わせにより神経幹前駆細胞とアストロサイトを特定できることが判明しました。今後の研究ではこれらの細胞の機能を細かく解明し、学習・記憶機能への影響を具体的に明らかにし、老化に伴う悪影響を未然に防ぐ手法を模索します。
- 【関連HP】
- 東京医科大学 組織・神経解剖学分野
- 東京医科大学 プレスリリース
- 【研究実績に関する主な論文】
- 2023年9月18日
健康増進スポーツ医学分野
非侵襲的手法を用いた筋代謝および褐色脂肪組織の評価法の開発と
生活習慣病予防の試み
日本を含む多くの国では、食事の過剰摂取や座位姿勢保持などの不活動時間が増えることにより、エネルギー過多となり、生活習慣病の急拡大が問題となっています。そこで、当分野では、非侵襲的手法を用いた筋代謝や褐色脂肪組織の評価法を開発し、個々人に適したエネルギー消費増加策を処方しています。これまで当分野が実施した研究では、一過性の座位姿勢保持が生体に及ぼす悪影響や、短期的および長期的な運動実施に伴う生体の変化、ヒト成人および子どもの褐色脂肪組織の定量とその増強法を見出してきました。今後さらに研究を推し進め、最終的に、生活習慣病の予防を介した個々人に見合った健康寿命延伸策を提案したいと考えています。
- 【分野HP】
- 東京医科大学 健康増進スポーツ医学分野
精神医学分野 睡眠・食事・運動などの生活習慣がストレスに及ぼす影響に関する研究
食事や睡眠などの生活習慣が日常のストレスに与える影響を研究し、メンタルヘルス改善のための根拠に基づいた生活指導の確立を目指しています。これらの研究成果の応用が職場や学校、家庭における精神疾患と生産性低下の予防につながり、さらに診療における薬物療法だけに頼らない精神疾患治療の確立に寄与することが期待されます。これまでの当分野の研究では、規則的な食事習慣、寝酒しないこと、野菜を摂ること、睡眠を十分にとることが、ストレスを軽減することに役立つことが明らかになっています。今後、さらに前方視的な観察研究および介入研究によりこれらのエビデンスを確かめていく予定です。以上の試みにより、患者および国民に優しいストレス対処法の確立を目指しています。
- 【関連HP】
- 東京医科大学 精神医学分野
産業精神医学支援プロジェクト
- 【研究実績に関する主な論文】
- 2023年1月25日 2023年1月13日
組織・神経解剖学分野
摂食抑制ニューロンを生み出す動作原理の解明:
メタボリックシンドロームの予防へ向けて
POMC(プロオピオメラノコルチン)ニューロンは摂食を抑制する働きがあり、正常では、その持続的産生によって摂食量が制御され、恒常性が保たれます。ところが、高脂肪食の長期摂取などによりPOMCニューロンの産生低下が引き起こされると、摂食異常を起こしメタボの一因となることが知られています。
私たちは最近、POMCニューロン産生において、神経幹細胞レベルではSHHおよびNOTCHシグナルが協調的に作用する一方で、神経前駆細胞に対してはそれぞれ正と負の制御をすることを世界に先駆けて示しました。これらの知見は、将来、継続的なPOMCニューロン産生を可能にするとともに、メタボ予防戦略の基盤作りにつながることが期待されます。本研究成果は、日刊工業新聞に掲載されました(https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00645726)。
- 【関連HP】
- 東京医科大学 プレスリリース
- 【研究実績に関する主な論文】
- 2022年8月11日 2022年1月18日